夏のはじめの寂しさ
海羽柚花
なつのはじめのさびしさ
6月、ジメジメとした日が続く中にあるカラッと晴れる梅雨の中日の夜。
宮木舞雪、ただいま猛烈に逃げ出したいです。
春から大学生になり、一人暮らしを始めた。
実家暮らしできたら良かったのになんて、決まった時は憧れの一人暮らしにあんなに喜んでいたのに。順調とはいかないがそれなりに慌ただしく生活している。3ヶ月目に突入した今はこの生活にも随分慣れた。
心の余裕が出来たのか…
ふと寂しくなった
夜なのもあるだろう…
実家の賑やかなあの雰囲気が…
毎日うるさくて嫌になっていたあの場所が…
今のこの時間だけは無性に恋しくて。
また、この季節か…
実家にいる時も毎年5月から7月にかけてなぜか寂しいと感じる時が多く夜によくベランダで空を眺めた。何もかもを放棄して逃げ出したい、そんなことを考えてしまう時期。
五月病……なのかな?
この時期の夜の外は昼間の暑さが嘘のように涼しい。私が1番過ごしやすい気温なのかもしれない。実家にいた頃は気づいたら1時間、2時間外で何も考えず空を見つめる、なんて事がよくあった。
今、私がベランダに出てもあの頃の景色は広がっていない。
畑しか無かった景色は今や住宅街に変わった。
今の生活が嫌な訳では無い。
早く早くと急かす母の声はないし、今日あったことを事細かに聞いてくる父もいない。聞いて聞いてと鬱陶しいぐらいに絡んでくる弟もいない。
自分のペースを乱されなくなると嬉しかったのに。
ふと寂しくなって、逃げ出したくなるだけ。
何も考えず時々通る車や消えない町あかりをただ見つめる。
ここはあそこじゃない
逃げ出したい
何もかも放棄して
どこか知らない野原で横になって星を眺めたい
ひとりは嫌だ
でも……1人がいい
そんな葛藤を静かにしたって意味は無い。
ただ…いつもより寂しい それだけだから
夏に変わる
空が変わる
だから大丈夫 この空もすきになる
夏のはじめの寂しさ 海羽柚花 @miwayuka
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