拝啓 ウソツキな君へ

ノアの方舟

第1話 「元カノと桜吹雪」

騒がしい校門。新入生を見物しに来る先輩。テンションの高いクラスメイト。未だに少し緊張している担任。これからの高校生活を共に過ごすであろうこの人達の中に、君はいた。

教室の後ろだと言うのに一際その華麗さが目立つ君は、早速クラスで話題に上がっている。まだこの高校に入学してから2日目だと言うのにもう学年3大美女に入っているらしい。

そんな彼女は僕のような人間にとって別の意味でも近寄り難い存在だった。

森元智亜貴___。

小学校からずっと同じで、僕の元カノだ。

どうして高校でも彼女とクラスまで一緒なんだ___なんて思っていると聞き覚えのある声が鼓膜を殴るように飛んできた。

「アオハルの代名詞とも言える高校生活がスタートしたってのに相変わらず暗いなぁ櫂!!!」

コイツもそう言えば同じだったのか。若干の溜め息を漏らしながら応える。

「お前は相変わらずうるさいな彰。高校ではもう少し大人しくなると思ってたよ。」

今俺に声量を全く考えず話しかけに来たのが中学の頃いつも一緒にいた冴島彰だ。彰は中学で同じサッカー部だったことがキッカケで一緒にいるようになったが、中学ではこいつに振り回されてばかりだったせいで毎日がしんどかった。だからこの高校生活だけは静かに大人しく過ごそうと決めていたのだ。それなのにこの馬鹿は人の気も知らずにデリカシーの無い発言をしてくる。

「とにかく、僕は大人しく静かな高校生活を送りたいんだ。中学の頃のようにはいかないからな。」

そう彰に伝えると僕は自分の席へと向かおうとした。すると今度は別の、高く可愛らしい声がすぐ側で聞こえた。

「櫂!クラス一緒だったんだね!知ってる人いて安心したぁ。とりあえず1年間よろしくね!!」

そう言い彼女___、森元智亜貴は再び教室の後ろへと歩いていった。学年3大美女から下の名前で呼び捨てにされる男子は否が応でも目立ってしまう。

どうやら本当に僕は神に嫌われているらしい。これじゃ大人しく静かに過ごすどころか質問攻めに合うに違いない。

こうして僕の思い描いていた高校生活は窓の外から見える桜のように儚く散っていったのだ。

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