聖夜の伝染
森本 晃次
第1話 第1章
季節というのは、イベントを迎えることで、思い出したように帳尻を合わせようというのか、昨日まであれほど暖かくて、ポカポカした日々が続いていたのに、まるで判で押したかのように夕方あたりから降り始めた雪が、ゆっくりと空から舞い降りてきた。降ってきたなどという言葉に似合わない情景は、人の心に温かさを運んでくるかのようだった。
今日は、十二月二十四日、世間ではいわゆるクリスマスイブであった。
――恋人たちの集う夜――
とでも言えばいいのか、季節が過ぎ去るには何かの儀式が必要であるとするならば、年末という時期は、賑わいが多すぎる。ただでさえせわしない時期であるのに、クリスマス、大みそか、そして正月と、ひっきりなしである。
子供の頃は、与えられるものだけだったので、手放しに嬉しかったが、成長してくると、それぞれに差がついてくる。ずっと与えられるものに甘えていられる者、与える側になる者、与えてもらいたいがために、事前準備に余念のない者、それぞれ思いはバラバラだ。
与える側に回るのも楽しいかも知れない。積極的な性格の人ならそれでもいいが、引っ込み思案で、しかも女性であれば、与えられるものがなければ、残るのは寂しさだけである。特にまわりの楽しそうな情景を目にしなければいけない状況に、果たして耐えられるかどうか、顔で笑いながらでも、本心を探ってみる勇気も持てない人は、寂しさの堂々巡りを繰り返すだけだった。
楽しいクリスマスを迎えたことも、そして寂しい堂々巡りを繰り返すクリスマスを迎えたことも両方ある理沙は、今年こそは素敵な男性と出会いたいと思っていた。
昨年のクリスマスは、楽しいクリスマスだった。年が明けてしばらくすると破局が待っているなど、思いもしなかったこともあって、待ち合わせの場所で待っていれば、必ずやってきてくれる人がいることの幸せを、クリスマスで頂点に立つことができたのだった。ただ、最近までは、その時のクリスマスのことを思い出すのも嫌だった。別れが突然だったこともあって、別れた後のショックは半端ではなかった。
ショックな時というのは、よかった時のことしか思い出せないもので、よかった時のことを思い出して悦に入ってしまうと、今度は反動で襲ってくる寂しさに耐えられなくなってしまう。だから、なるべくよかったことを思い出そうとしないようにするのだが、それでも思い出してしまう状況は、精神的に辛さしか与えてくれないものである。
頂点であったクリスマスのことは、本当は思い出したくないことである。それなのにどうしても思い出してしまい、楽しかった思い出に入り込まないようにしようと思うことで、虚偽の楽しさを作り出そうとしてしまい、屈折した楽しさを記憶の奥から引っ張り出してしまう。
クリスマスが、悪夢の時間だと思ってしまうのもそのせいで、余計にクリスマスを極楽に変えてしまいたいという欲望を抱くようになる。まわりが囃し立てるクリスマスのイメージを、別世界の自分をイメージすることで、客観的に見るようになってくる。
それでも、寂しさを知っているだけに、
「クリスマスまでに、彼氏を見つけるんだ」
と、気合いを入れて臨めるのも、まだまだ若さを武器にできると思っているからだ。
理沙は、短大を出て、今年で二年目を迎えていた。昨年はまだまだ仕事に慣れていない中で、純粋に毎日を一生懸命に前を向いていたおかげか、彼氏ができた時、最初から彼氏がほしいという意識を持っていたわけではない。
そんな理沙に声を掛けてきた男性がいた。同じ会社で部署は違うのだが、彼は理沙が入社してきた頃から気になっていると言っていた。引っ込み思案でなかなか声を掛けられなかったと言っているが、実際には理沙の一生懸命に仕事をしている姿を、少し怖いと思っていたのが本音だという。
それなのに、理沙は声を掛けてくれた彼を、「頼もしい男性」だと思い、いつでも彼に委ねる体勢に持っていっていた。彼からすれば、任せられると、どうしても頼りないところがあり、理沙が考えているような男性ではなかったというところが、うまくいかなくなった最大の理由だっただろう。
その時はそんなことが分かるはずもなく、お互いに相手に気を遣いながら、それでいて相手に委ねるような気持ちだったので、大切な決断には、お互い譲り合ったり優柔不断な性格が衝突を招いたりしていた。ただ、お互いのことが分かっているわけではないだけに、気を遣っている自分に対して、相手が気を遣ってくれていないように見え、いつまでも交わることのない平行線を二人で描いていたのだった。
クリスマスは、そんな二人が一番近づいた時だった。クリスマスという雰囲気が、二人に気持ちの余裕を与え、与えられた気持ちが相手への思いやりに変わることで、夢のような世界が待っていたのだ。
――初めての二人だけの夜――
世界中の人が、二人を祝福してくれているような錯覚さえ覚えた。
クリスマスというイベントは、一年で一番のイベントなのかも知れない。バレンタインデーという日もあるが、もらえなかった人、渡す相手のいない人には悲惨な日である。クリスマスであれば、団体で祝うこともできれば、家族全員で楽しむこともできる。何よりも一部の人間のためだけではないという気持ちになれるところがいいのだろう。だからこそ、クリスマスにできるお祝いは、世界中から祝福されているような錯覚に陥るのだ。
二人きりになって、身体を重ねる。気持ちよりも身体が正直であることに気付かされるが、今まで正直じゃないと思っていたわけでもないくせに、急に正直に思えるのは、恥じらいを初めて知ったからではないだろうか。二人きりの世界にドキドキし、恥じらいを思い知ると、そこに広がっているのは、相手に委ねるという気持ちの余裕を感じることができるからだ。
「来年の今日は何をしているかな?」
というのが彼の口癖だった。
「そうね。きっと来年の今日も二人でここにいるかも知れないわ」
と、理沙は答えたが、その心はそれだけ平穏に、波風を立てないように過ごしていきたいという思いの表れだったに違いない。
では、来年のことを話題にするのなら、
――去年はどうだったんだろう?
という発想も生まれてくる。仕事ばかりしか頭になく、彼氏を求めるなど百年早いくらいに思っていた。いや、今だからそう感じるのであって、彼氏という発想すら生まれてくるものではなかったはずだ。
確かに今年一年は、平穏無事に過ごせたと思う。何もないのが気持ち悪いくらいで、それだけあっという間に過ぎた一年だった。
それでも一日一日は結構長かったような気がする。仕事にも慣れてきて、新しいことを覚える余裕も生まれてきたことで、仕事が充実してきた。充実していると、集中している間は、結構時間があっという間に過ぎてしまう。だが、過ぎた時間を思い出そうとすると、結構長かったことに気付くのだ。
長かったと気付くのは、一日の始まりを思い出すからだ。長さを知るには、始まりを知る必要がある。一日の始まりを思い出すと、記憶の奥に入ってしまっている。それだけ吸収することが多かった証拠だろう。
集中していると、時間の感覚があっという間に感じるのは、集中の始まりが曖昧だからではないかと感じる。集中し始めた時間を意識しているにも関わらず、その時の心境は曖昧なのだ。時計で時間を確認することで集中が始まるという意識があるからではないだろうか。
季節が冬から春に移るにつれて、理沙は時間の早さを感じるようになっていた。漠然とした毎日を感じるようになったからで、身が軽くなったことも一つの理由であろうか。
だが、理沙が一番好きな季節は冬であった。せわしない年末を過ぎると、一気に正月を迎えるが、正月だからと言って、引きこもってしまう風習が嫌だった。
子供の頃から活発な性格だった理沙は、師走が近づくと、妙にウキウキしていた。師走の慌ただしさの中で、
――年末の慌ただしさが終われば、楽しい正月がやってくる――
と思うからだ。
確かにお年玉がもらえたりして、楽しいこともあるが、普段と違った特別な日だという理屈が嫌だった。友達と遊ぼうと思っても、
「お正月なんだから、遠慮しなさい」
と、親から叱られていた。
――他の友達の家は誰もそんなこと言わないのに、どうしてうちだけ?
と、言いたい言葉をグッと飲み込み、我慢していたが、それでも年末の慌ただしさは嫌いではなかった。
一人暮らしを始めたのは、短大に入ってからのことだったが、
「短大に入学したら一人暮らしをしたい」
と言い出した時、絶対に反対されると思ったのに、反対らしい反対もないまま一人暮らしが始められた。
理沙が中学を卒業するくらいまで厳しかった両親も、今ではすっかり理沙のいうことに反対することはなくなった。もっとも親の逆らうことを最初からしなかった理沙である。子供の頃に親から言われていたのは、
――逆らうようなことがないように――
という伏線のようなものだったのかも知れない。そう思うと、親に対して抱いていた近寄りがたい感覚が次第に瓦解していくのを感じた。
今年のクリスマスも、彼と一緒に過ごせると思っていた理沙だったが、その思いに少し疑問を感じてきたのは、師走の声が聞こえ始めた時期だった。
ちょうど気持ちがウキウキしてくる時期だったので、昨年の自分を思い出していた。昨年の理沙は、ちょうど仕事にも慣れて、楽しい予感を感じ始めた頃だった。そんな昨年と比べて、今年はときめきのようなものを感じない。それがなぜなのかを一生懸命に考えた。彼との時間が楽しくないわけではないが、ドキドキする感覚がない。その時初めて理沙は平凡で漠然とした毎日が、自分に対してマイナスに作用していることに気が付いたのだ。
――去年とは違う――
その思いが、心の中に若干の変化をもたらしていることに気付き始めていた。それは予感めいたものであり、確証はなかったが、昔から予感めいたものを感じると、実際に起こってしまってからショックを受けないようにと、最初から覚悟をしてしまうように考えてしまうことが多かった。
それが理沙の考え方の基本でもあった。
予感をいい方に考えるか、悪い方に考えるかと言われると、悪い方に考えてしまうことの方が多い。こうなると、予感というよりも「虫の知らせ」という方が当たっているかも知れないと思うと、クリスマスが近づいてくることを手放しに喜べなくなっていた。
それでも、クリスマスのために、彼はホテルのレストランを予約してくれた。気持ちは嬉しかったが、どちらかというと彼らしくない。性格的に行き当たりばったりのところがある彼だったので、前もって予約など、どうした風の吹き回しなのだろうと思わないわけでもなかった。
実際、彼の様子を見てみると、最近マンネリ化にウンザリしているのではないかと思うところがあった。理沙も彼との間でマンネリ化を否定できないところがあると思っていたのだ。理沙の場合はマンネリ化を感じると、何とかマンネリ化を打破しようと考える方だが、淡白な彼はどう思っているのか、見えてこなかった。少なくとも打破しようと努力をするタイプでないことは確かだったのだ。
理沙は、短大の頃にも大きな失恋をした経験があった。面と向かって、
「君とはもう付き合えない」
と言われた。
「どうしてなの?」
と聞くと、相手は言葉に詰まることなく、
「君が鬱陶しいんだ。押しつけがましい性格が俺には我慢できない」
と、相当鬱憤が溜まっていたのか、躊躇いもなく、罵倒されたのを今でもはっきりと思い出すことができる。
押しつけがましいなど、当然意識の中にはなかった。ただ、付き合っている以上、何でも半分分けという考えがあった。それが当然だと思っていたのは、考えたくはなかったが、厳しかった親の影響が大きかったのだ。古風な考えの両親は、母親がどうしても父親に対して気を遣っていて、それが当たり前だという考えが家の中に充満していた。親に対して反発心しか漲っていない理沙にとって、何でも半分分けは、自分の中での男女の付き合いの基本となっていたのである。
自分の中で、両極端な部分があることにその時初めて気が付いた。その時の男性とは、結局別れることになったが、ショックだったのは、別れることになったということよりも、罵声を受けた内容だった。
――どこまで親の影響を受ければ気が済むんだ――
という気持ちが強くあり、また考えを改めてしまえば、今度は親の考えに近くなる。それだけは嫌だった。
極端な考え方を柔軟に変えてしまうことは、口で言うのは簡単だが、それほど楽なことではない。しばらく彼氏はできないだろうと覚悟したものだった。
就職してから特に仕事に慣れるまで時間が掛かるのは分かっていたので、彼氏がほしいとも思わなかった。仕事に慣れてくると、気持ちに余裕ができてきたことが、彼氏ができた一番の理由であろう。
――気持ちに余裕が生まれると、自然と男性が近づいてくるものなのかしら?
案ずるより産むが易しという言葉もあるが、下手に求める気持ちが強いとmまわりから敬遠されてしまうだろう。
季節がクリスマスというイベントを感じることで、気持ちがウキウキするように、一年という節目は、季節を一周させたことを強く感じさせ、区切りがさらなる先を見越すことができることに繋がるという意識を強く持っていた。
ホテルのレストランを予約してくれたのは嬉しいが、どうしても悪い方に考える癖がついている理沙には、彼の覚悟のようなものを感じることができた。それは、ホテルのレストランを予約することで、自ら逃げ道を封鎖しようという意識があるのではないかと思うことだった。それは、彼の最初から意図した意識ではないかも知れない。結果的に自分を追い込む形になることを意図して最初から考える人はいないだろうからである。元々行き当たりばったりな性格である彼にとって、彼女ができたによって自分に足枷を付けるということは、何かに悩んでいる気持ちがあるからではないだろうか。
特に残暑の頃くらいから、彼の様子がよそよそしくなっていた。今年の残暑はしつこく、理沙もウンザリしていた。ただ、それは理沙だけが感じていることではなく、彼はもちろんのこと、見るからにまわり全員が感じていることだった。
こんな鬱陶しい季節を全員が同じ気持ちでいることに、理沙は耐えられなかった。それは自分がまわりに対して取っている態度が露骨なものであるのかどうか分からなかったからだ。まわりが自分に対して取っている態度には鬱陶しさを感じるのに、自分の態度が分からないと、まわりに対してそれだけ気を遣わなければいけないと思うからであった。
――きっと彼にも気を遣っていたんだろうな――
人に気を遣うことは嫌いだった。それも育ってきた環境から生まれたもので、気を遣うことは、自分の気持ちを必要以上に押し隠すことであって、却って相手に不信感を与えることになると思ったからだ。
――そんな思いを彼にしている――
鬱陶しいと思われても仕方がないと思うようになったのも、その頃からだった。
彼は、勘が鋭い男性だった。いい加減なところがあって、勘が鋭い男性というのは、どうにも付き合いにくい相手であるということに、秋口になる頃に気が付いた。きっと、彼にもそんな気持ちが伝わっていたに違いない。それなのに、彼は態度を変えることはなかった。元々が忍耐強いところがあった。スポーツマンっぽいところのある人に惹かれるのが理沙だったのだが、彼は一見、スポーツマンというにはほど遠い雰囲気だったのだ。
背も低いし、少しポッチャリしている。外見は、冴えない男という雰囲気があったのだが、それでも彼に惹かれたのは、忍耐強いところがあるからだったのだ。
それと理沙には表には出していないが、外見が冴えない男性の方が競争率が低くていいという思いがあった。表には出していないが、まわりの親しい人には分かっていたようだった。
「理沙はどうも玄人好みのところがあるからね」
と、どちらかというと少数派であることを理解している人も少なくなかった。それだけ天邪鬼に見えていたのだが、逆に言えば、自分の中で緻密な計算が施されているところもあり、それでいて、自分にいまいち自信が持てないところがあったということであろう。
勘が鋭い彼は、理沙が付き合っていくうちに、次第に本性を表してくるのに気付いた。最初は競争率が少ないことを望んでいたが、やはり外見も気になるようになってきたことが理沙の態度を見ていると、露骨さを感じてくるようになったのだ。
しかも、子供の頃からの性格が見え隠れする。大人しい性格だと思っていたが。そこには誰にも譲れないほどの硬い性格があったのだ。融通が利かないところが随所に見られ、何でも半分分けというところは、いくら付き合っている相手であっても、納得できることではなかった。
付き合っている相手だからこそ、納得がいかない。お互いに自由なところがあってこそ、信頼関係が生まれるものだと思っていたこともあって、彼にも忍耐を伴って付き合っているところがあったのだ。
お互いに忍耐力を持って付き合い始めると、先が見えているのかも知れない。あとはどちらから言い始めるかというのが焦点であり、引き際を間違えないようにしないと、別れた後にも、しこりが残る。相手に対して残るしこりだけではなく、自分の中で後遺症として残ってしまったら、立ち直るまでに相当時間が掛かってしまうだろう。
お互いに相手の気持ちを分かっているつもりだった。
――自分から言い出すのも癪だし、かといって、相手に愛想を尽かされるのも嫌だ――
この思いは理沙の方が強かった。
実際に露骨に表に出ていたのは理沙の方で、彼は何を考えているのか分からないほど、冷静だった。まわりから見ると、二人の仲がギクシャクしていることは分かるだろう。だが、ギクシャクの原因は理沙にあるようにしかまわりからは見えないに違いない。そうなると、不利なのは理沙の方で、自分から言い出すタイミングを、自らで失わせているようだった。
彼は本当に冷静だった。笑顔を見せることはなかったが、普段からあまり表情の変わらない人だったので、それも彼の態度には有利だった。別れに向かってのキャスティングボードは、明らかに彼に握られていると言ってもいいだろう。
いよいよクリスマスに近づいてくると、今度は理沙が修復を考え始める。
――クリスマスのイベントを機会に、また仲良くなれるかも知れないわ――
実際に、彼に対して本当に嫌いになったわけではない。彼も同じだろう。だったら、出会った頃の思い出をお互いに思い出せば、その時点に戻れるかも知れない。この思いが、理沙の中にはあり、最後の砦だとも言えただろう。最後の砦とは言いながらも、理沙は高い確率で修復できると思っていた。自分だってクリスマスのあの時に戻れれば、今までの楽しかったことを思い出して、気持ちが新鮮になれると思っているのだから、男性だったら、余計に修復する気持ちが強いと思ったのだ。ただ、これは学生時代に仲が良かった友達と話したことだったが、
「男性は、女性に比べて未練がましいところがあるから、別れに際しても、楽しかったことを思い出すもののようだわ」
と言っていた。
その意見には理沙も賛成で、今まで付き合ったことがある男性も皆そんなタイプだった。きっと彼も同じなのだろうと、タカをくくっていたのだ。
だが、実際に付き合ってみると、そんなことはなかった。まるで女性のような淡白さがあるところだった。そして、普段は普通に男性である。見かけによらず、男らしさを持っていたのだ。
そんな融通の利かない男を、そのうちに見限ろうと思っていた。いつ見限ろうかと思案していた。もう修復の余地はない。理沙もすでに覚悟を決めていたのだ。
いよいよクリスマスが近づいてくる。大きなイベントは今日が最後、心の中で引導を渡すつもりで、
――今日はたっぷり優しくしてあげよう――
と思っていた。もちろん心にもないことで彼に対しての引導にはふさわしいだろう。そう思うと理沙は鳥肌が立ってくるのを感じた。今まで男性をフッたことなどない理沙にとって、楽しみであることは間違いなかった。
理沙は、思い切りおしゃれをして、普段よりも大人っぽい服装で出かけた。
――最初で最後だわ――
これがあの男に見せる偽りの自分、そして、偽るのは最後にしようと思った。最初だと自分では思っているが、それは自分で決めることではないような気がしたが、偽りの自分がどんな女に変貌するのかをドキドキして楽しみにしていたのだった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます