第15話 ガーデンパーティー
ガーデンパーティーに参加すると決まってからは、これまで以上に忙しくなった。
仕事に加えて自分たちの準備もしなくてはならないからだ。
「私も赤い小物を買わないといけないですね。明日から休憩時間に出かけて探そうと思うのですが、よろしいですか?」
「今から探すのは大変だろう。ここから好きなアクセサリーを選びなさい。ただし、金貨一枚以内のもの一つだけだぞ」
「わあ、ありがとうございます!」
ジョナスさんのご厚意で、商品の中からアクセサリーを一ついただけることになった。
だけど自分で身に着けるのは久しぶりすぎて、何を選べば良いのかよく分からなかった。
(うーん……お客様のを選ぶのは好きだけれど、自分のは難しいわ)
「悩んでるの? じゃあ俺が選んであげようか」
「レオが選んでくださるのですか? 是非お願いしたいです」
「そうだな……これとか良いんじゃない?」
レオが選んでくれたのは、レッドスピネルのピアスだった。小ぶりだけれど、色鮮やかな赤が美しく揺れるデザインのものだ。
「綺麗……じゃあこれにします!」
「つけてあげるから鏡で見てごらん」
「あ、ありがとうございます」
ピアスなんて家を出た日にジョナスさんに渡して以来、全くつけていなかったから変な感じだ。
(穴、塞がってなくて良かったわ……。それにしても人につけてもらうなんて久しぶりだから……緊張する)
レオにピアスをつけてもらっている間、妙な緊張でドキドキしてしまった。
「はい、出来た。やっぱりよく似合う!」
鏡で見てみると、強張った笑顔を張り付けている自分と綺麗なピアスがアンバランスで可笑しかった。
「本当ですか?」
「うん、とっても。ねえ師匠?」
「そうだな。ソフィアには明るめの赤が良く似合う」
「ありがとうございます……あの、他の準備があるので私は失礼しますっ」
二人が褒めてくれるのがむず痒い。だんだん顔が熱くなっていく。
見られているのが恥ずかしくなって、慌ててその場を離れた。
(宝石が似合うなんて言われたことないんだもの……でも、ちょっと嬉しいかも。いけない、いけない。ちゃんと準備しないと)
準備が必要なのは赤い小物だけではない。ガーデンパーティーまで時間がなくて忙しかったけれど、準備期間は少しワクワクしていた。
(久しぶりのパーティー、それに二人と一緒だからかな。三人でパーティーなんて二度とないかもしれないし)
あれこれと想像しながら準備をしているうちに、あっという間に当日がやって来た。
「わあ……素敵なお庭ですね!」
パーティー会場である城の中庭には色とりどりの花が咲いており、飾り付けられたテーブルには料理や飲み物が所せましと並べられていた。
貴族たちに交じって見知った顔が何人か確認できた。エドワード様が言っていた通り、本当に色々な人が参加しているようだ。
「俺、飲み物を取ってきますね。二人は待っていてください」
レオは慣れた様子でパーティーの人の輪の中に消えていった。
私とジョナスさんは遠くから聞こえる音楽に耳を傾けながら、参加者たちを眺めていた。
「ほらソフィア、あそこを見てごらん。店に来てくれたお客様がいらっしゃる」
「本当ですね。あのネックレス、太陽の下だと明るくてよくお似合いです。……お客様が実際に使ってくださってるのを見るのは初めてです。なんだか嬉しいですね」
実際に売った商品を身に着けて笑顔で過ごしているお客様を見ていると、とても温かい気持ちになった。
(お客様の素敵な時間の一部になれた気がする。この光景を見れただけでも今日来た甲斐があったわ)
「そうだな。私達は普段から貴族を相手にすることが多いから、こういう機会でもない限り直接見ることは出来ない。エドワード様はそれを分かってて招待してくださったのだろう」
「ありがたいです。今度お礼状をお送りしておきますね」
招待された時、断らなくて良かったと心の底から思った。
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