明日死のうと思うので僕とセックスしてください。

眠眠ぜ眠

第1話

よし、明日死のう。

朝、自室で目が覚めて寝ぼけた頭に1番最初に浮かんだのがそれだった。


これは極めて突発的な衝動で自分でも少し驚いている。


別に僕がいつ死のうが問題ない。それがたまたま明日になったというだけだ。

死ぬのであればこの衝動が収まる前にとっとと死んでしまえばいいのだが、いかんせん練炭が届くのが明日なのだ。


僕は練炭での自殺を予定しているので練炭がないと死ぬ事ができない。

練炭自殺の他にも色んな自殺方法はあるのだが、僕はビビリなのだ。あと痛いのも嫌だし、自分が死ぬことで人様に迷惑をかけたくもない。

そんな僕がこのスマートな頭脳で導き出した最善の自殺方法が練炭自殺だった。


練炭自殺であれば車に閉じこもってお酒なんか飲みながら火をつけたらいつの間にか逝ってるだろう。痛くもないし、そこまで怖くもない。そして迷惑をかける人も最低限。完璧だ。


そして朝イチの寝ぼけた頭で練炭を買ったわけだが、お急ぎ便でも届くのが明日だった。そんなわけで死ぬのは明日だ。

とりあえず朝イチで職場には退職を一方的に伝えたから、今の僕に余計なしがらみはない。


なので今日はやり残した事を消化していこうと思う。

最近は毎日のように死にたいと思っていた僕だが、死ぬ前にしておきたいことがある。


別にどうしてもしたいと言うわけではないが(強がりではない)、男としてそれをしないで死ぬのは何か悲しい気持ちになる。

何かというと、そうセックスである。


現在は22歳、享年22歳となる予定の僕だが、今までセックスをした事がない童貞なのだ。

これまで彼女がいた事はあるし、その彼女とはセックスの一歩手前あたりまでしていたが、本番までは至らなかった。僕が普通にビビってできなかったからだ。


なので今日は未練が残らないようにしよう思う。二度寝したためにもう正午を過ぎているが、これから行動開始だ。


「セックスするって言ったらマッチングアプリだよな。よし、インストールぽち。はいはい、顔認証ね。」


そんなこんなでアプリのインストールが終わり、初めてのマッチングアプリをやや緊張しながら開くとプロフィール入力画面が表示された。


「とりあえずは年齢、性別、顔写真っと。まあ、こんな感じでいいでしょ。ていうか、今更ながらセックスしたいなら風俗でよくない?なんで最初に思いつかなかった?」


などと独りごちながら、せっかくここまで入力したんだしマッチングアプリでいいかと言う気持ちで僕はプロフィールを埋めていった。


「で、最後に自己紹介と。言っちゃ悪いけどヤリモクに自己紹介なんているのか?いや、逆にヤリモクだから自己紹介がいるのか。親しき仲にも礼儀あり?的な感じで。まあ、自己紹介なんて今の自分を書けばいいだけだし簡単か。」


などと意味不明な事を考えつつも、僕は自己紹介の欄を埋めた。


『明日死のうと思うので僕とセックスしてください。』

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