花の匂いと排気ガス

@manolya

第1話

 何度も繰り返し、同じ映画を見る。そのたびに、今度こそ違う結末が待っているんじゃないかと祈る。

 月も星もない夜、境目も分からない、真っ暗な空と海を見る。そうすると、まるで自分がコールタールに浮かんでいるように感じた。僕は若くて、自分の未来こそ先が見えず、真っ暗闇を歩いているようだった。それは絶望とか不安とか、そういうものではなく、むしろ、先が見えないものに闇雲に飛び込んでいくことへの冒険心とか、未知への憧れを感じていたのだ。映画の結末さえひっくり返せるような気がしていた。コールタールの闇には、僕の果てしない未来が溶けていた。

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