夢幻夜譚
山﨑或乃
第1話 白昼夢 幻
―――日常なんて唐突だ。
いつもと変わらぬこの風景。適当に友人と駄弁って短い昼休みを潰す。高校生の日常なんてこんなものさ。弁当食べて一息ついたらもう貴重な休みなんて三十分もない。だったら何かアクションを起こすよりも、こうやって友人と適当に駄弁る方がマシというもの。
テケトーなクラスメイトとこれまたテケトーな話題で盛り上がる。どうせ掃いて捨てるほどありきたりな男子高校生五人さ。今話題のアイドルに漫画アニメ、それに少しばかりのエロトーク。特筆すべきことなんてどこにもない。
「―― もし」
なんてちょいとばかし古風な呼びかけに「なんだ?」と振り返る。そこにはとびきりの美少女が佇んでいた。いっそ冷酷なまでの白。そして無機質なまでの滑らかさは、まさに陶磁のような肌なんて美称が似合うほど。その艶やかな黒髪は長く、今は喪われた清楚なんて言葉を彷彿させる。そのくせ紅い唇は男を誘うかのように淫ら。
こんな美少女この学校にいたかな?なんて疑問に思っていると、その蟲惑的な唇が開く。
「貴方は貴方の〝ユメ〟を救わなければなりませんわ」
「どういう… 」
俺の言葉は彼女の指で遮られる。口元に当たる冷たい感触。まるで雪のような… 。
「続きは夢で語り合いましょう。川瀬尋斗様」
にこりと笑った彼女。その魅惑的な笑顔に思わず我を忘れた。
気がつけば先程まで俺の前にいた彼女はいなくなっていた。不思議な気分だ。苦笑い一つ近くの友人に話しかける。
「さっきの誰なんだろうな?それに変なこと言ってたし」
「ん?誰かいたのか」
「…… 。いや何でもない。忘れてくれ。それよりさ―― 」
まるで先刻の謎の美少女とのことなど、なにもなかったかのような友人の物言い。今はその流れに乗ることにした。あまりに浮世離れしすぎて現実感が伴わない。きっと何もなかったのだろう。美少女との邂逅におかしな言葉。何もなかった。そうに違いない。まるで狐狸にでも騙されたか、はたまた… 。
―― 白昼夢でもみたのだろう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます