第164話 エイミル陣営へ
「逃がして悪かったな」
俺はシルヴィが消えると、ラウラに謝る。
「いや、いいよ。正直、得体の知れない存在だった。オリヴィア様がいるし、無茶はできない」
俺もあそこまで魔力を消せる魔術師を見たのは初めてだった。
「まあいい。急ごう。これで脅威は消えたと思うが、さっさとエイミル王に会った方が良い」
「そうだね」
俺達は納屋を出ると、村を出て、馬車まで戻る。
そして、オリヴィアを馬車に寝かせると、出発した。
「ここからどれぐらいかかる?」
「そんなには遠くない。殿下、あんたも休みな。寝てないだろ」
正直、眠い。
脅威が去ったことで一気に疲れがきた。
「少し横になる。お前は大丈夫か?」
「元Aランクを舐めるんじゃないよ。寝ないことなんてしょっちゅうさ」
「そうか。後は頼む」
「ん。おやすみ」
俺は横になると、目を閉じりる。
すると、一気に睡魔が襲ってきて意識が飛んでいった。
◆◇◆
目が覚めると、身体を起こす。
すると、オリヴィアはすでに起きていたようでこちらを覗いていた。
「よう、ケガはないか?」
「ありません。この度は申し訳ございませんでした」
オリヴィアが謝罪をしてくる。
「問題ない。事情は?」
「ラウラから聞きました。まさかユルゲンが裏切っていたなんて……」
「そういうこともある。それより、お前は言い訳でも考えてろ」
「もうどうしようもないでしょう。素直に言います。最悪は修道院送りでしょうね」
向こう次第だが、まあ、そうなるかもな。
「ふーん……お前がそれでいいならいいわ。ラウラ、ここはどこだ?」
俺はラウラに場所を聞く。
「もうすぐで着くよ」
「どうでもいいけど、なんでババアに戻ったんだ?」
さっきの若くて美人の方が良いのに。
「別にいいだろ。とにかく、事情説明は私がするからあんたらは大人しくしてな」
「じゃあ、任せるわ」
俺は待つことにし、馬車の中から外を眺めた。
外は夕方になろうとしているらしく、徐々にだが、空が茜色に染まり始めている。
そのまましばらく待っていると、前方に陣が見えてきた。
すると、陣から馬に乗った兵士が近づいてくる。
「ラウラ殿ではないですか!? いかがなされた?」
兵士は馬上からラウラに尋ねる。
「至急、王に取り次いでほしい。話さねばならないことがある。ここにはオリヴィア様とエーデルタルトのロイド王子もおられる」
「姫様が!? 一体何故…………いえ、わかりました! すぐに陛下に取り次ぎます!」
兵士はすぐに馬を駆けさせ、陣に走っていく。
そのまましばらく待っていると、先程の兵が複数の騎兵と共に戻ってきた。
「お待たせしました。陛下が話を聞きたいそうです。我らについてきてください」
「はいよ」
婆さんが馬車を動かすと、そのまま騎兵と共に陣に入っていく。
そして、馬車が止まったので俺とオリヴィアは馬車から降り、婆さんも荷台から降りた。
「しばしお待ちを!」
兵士がそう言って駆けていくと、すぐに立派な髭を生やしたおっさんが何人もの兵を引き連れてやってくる。
間違いなくエイミル王だ。
「ラウラ、何があった? 何故、オリヴィアとロイド王子がここにいる?」
「陛下、至急、お知らせしなければならないことがあります」
「そう言っておったな……なんだ?」
こいつら、このまま話す気なんだろうか?
「ラウラ、エイミル王。話すのはいいが、オリヴィア王女はもう限界だ。休ませろ」
オリヴィアは表情こそ変えていないが、体力的にきついだろう。
「ふむ……おい、オリヴィアを!」
「はっ! 姫様、どうぞこちらへ」
エイミル王が兵士に命じると、兵士がオリヴィアを連れてどこかに行く。
「国家の大事をこんなところで話すな。オリヴィアに聞かせるな。そんなこともわからんのか? ついでに俺も眠いわ」
大丈夫か、この王?
「な? 傲慢だろ? 本音は最後のやつ」
「そうだな……これだからエーデルタルトは嫌なんだ」
婆さんとエイミル王がコソコソと話す。
「何か?」
「いや……」
「ロイド王子よ。しばし休むが良い。おい、王子を丁重にお連れしろ」
エイミル王が兵士に命じる。
「はっ! ロイド王子、こちらへ」
「うむ。腹が減ったな」
昨日の夜からロクに食べていない。
「…………すぐにお持ちします」
「ワインはあるか?」
「申し訳ございませんが……」
「まあよい」
俺は兵士と共に歩き、幕営まで来ると、テントの中に入る。
テントの中は広く、簡易だが、ベッドが置いてあった。
「すぐに食事をお持ちしますので休んでお待ちください」
「はいはい」
俺がテントに腰かけながら待っていると、兵士が食事を持ってきたので食べ始める。
正直、そんなに美味いものではなかったが、空腹だったのですぐに食べ終えた。
そして、食事を終えると、ベッドで横になり、眠ることにした。
すでにコンラート達もジャス陣営に着いているだろう。
リーシャとマリアもこんなベッドで寝てるのかねー?
俺は早く2人に会いたいなと思いながら目を閉じ、睡魔に抗わずに眠ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます