綿毛ちゃんと夜の子の恋
はる
茉莉花は完璧
茉莉花は完璧な少女だ。明るい、うねるような茶髪に、利発そうな瞳。肌はぬけるように白く、口元はいつも微笑んでいる。私は彼女の月のようなものだ。目立たず、大人しくじっとしている、彼女の蔭。私がそう思っていることを茉莉花は知らない。
「柚希、音楽室行こ〜」
茉莉花がそう私に言った。きらきらした瞳に私が映っているのだろう。
「いいわよ」
椅子を引いて立ち上がる。茉莉花は弾む足取りで、私の隣を歩いている。
「柚希、今日も可愛いねぇ」
頭を撫でられる。私はその手をさりげなくかわした。
「そんなことないわよ」
じっと見つめられる。
「柚希は可愛いんだよ」
茉莉花は私のことを高く買いすぎだわ。
「さ、授業に遅れるわよ」
「可愛いって言ってるのにー」
むーと膨れながら私の隣を歩く少女。幼いんだか大人なんだか分からない子。そんな彼女のことが好き。
ふわふわな髪が歩くたびにぽわぽわと跳ねている。茉莉花に手を伸ばせば、触れられるのだろうか。全くそんな気はしないけど。
少し先を歩く彼女の背を、そんなことを思いながらぼんやりと眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます