第2話 何かおかしい


「痛い!」

 同級生の令嬢が、教室で、イスに足の小指をぶつけたようで、うずくまっています。


「魔法で治癒しますよ」

 声をかけます。大きな声では言えませんが、光魔法の練習台になってもらいます。


「あら、治った」

 令嬢が、不思議そうな顔をしています。


「ありがとう、オードリ」

 令嬢から、満面の笑顔で感謝の言葉を頂きました。

 この笑顔を見たくて、厳しい修行に耐えています。


 あれ、グレース侯爵令嬢が、いつの間にか、横に立っています。


「おーほほほ、私が、ノロマなオードリ嬢の足を、蹴っ飛ばして差し上げました」


 え? 私の足を蹴ったのですか?

 小指をぶつけたのは、こちらの令嬢でしょ?


   ◇


「やだ、ニキビができちゃった」

 同級生の令嬢が、教室で、ホホを触っています。


「触らないで、魔法で治癒しますから」

 声をかけます。今度も、大きな声では言えませんが、光魔法の練習台になってもらいます。


「あら、消えたわ」

 不思議そうな顔をしています。


「ありがとう、オードリ」

 ニキビが消えたホホのエクボが、可愛いです。


 あれ、グレース侯爵令嬢が、いつの間にか、横に立っています。


「おーほほほ、私が、生意気なオードリ嬢のホホを、ぶって差し上げました」


 え? 私のホホをぶったのですか?

 ニキビで困ってたのは、こちらの令嬢でしょ?


 なんだか、おかしいです。


   ◇


「きゃー!」

 令嬢の叫び声です。


「令嬢が階段から落ちたぞ!」

 これは大変です。


「動かさないで」

 階段の下で気絶している令嬢を診ます。


「鎖骨が折れている。魔法で治癒しますね」

 これは、滅多にない実験台です。

 魔力の消費が多いですね。これは経験値をガッポリと頂けます。


「鎖骨を治癒させました。他を見るため、治癒室に運びます。皆さん手伝って下さい」


 あれ、グレース侯爵令嬢が、いつの間にか、横に立っています。


「おーほほほ、私が、オードリ嬢を、階段から突き落として差し上げました」


 え? 私を突き落したのですか?

 階段を踏み外したのは、こちらの令嬢でしょ?


 グレース侯爵令嬢の知人たちが、率先し、ケガをした令嬢を治癒室に運んでいきます。



 なんだか、とっても、おかしいです!



   ◇



「話を聞いたよ、オードリ」


 教室で、王子様が話しかけてきました。

 金髪碧眼、王族特有のイケメンで、絵画みたいです。


 周りの令嬢たちの視線が痛いです。


「グレース侯爵令嬢から、足を蹴られ、ホホをぶたれ、それだけじゃなく、階段から突き落されたんだね」


「大丈夫かい?」

 王子様の心配そうな顔が、心をくすぐります。


「いえ、それは誤解です」

 王子様は、だれの話を聞いて、そんな勘違いをしているのでしょうか。


「相手の非を責めないなんて、なんて優しい心なんだ」

 王子様は、頭の中がお花畑になったようです。



 横の席を見ると、エイダン君が微笑んでいます。


 このクラスは、絶対に、何かおかしいです!




あとがき

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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