【幕間】金の勇(亡)者
「さて……」
カメラにケーブル類と、パソコンにつなぐ一式を手に入れた。
俺は今からスライム狩りをするわけだが、さっきから笑みがこぼれ落ちそうになってかなわない。
だって、
そのため、倒した時に出る魔石を取ったとしても二束三文……いや、キロ単価幾らという話になってしまう。
それがこちらでは一個3000円という破格の値段だ。
これで笑わずにはいられないだろう。
サクサクと草を踏み分けて歩いていると、件のスライムが見つかった。
「うす緑色――さっきと同じか」
悠・朱音・涼子の3人が潰した――いや、潰したのは涼子一人だけど――スライムと同じだった。
獲物を見つけたのでカメラの電源を入れて撮影を開始する。
「はい、みなさん、こんにちは。ヴァリッサー騎士団です」
挨拶は、自分が昔所属していた騎士団の名前を借りた。
隊長になってから後進の育成にも力を入れ、最後には独り立ちして俺は用済みとなってしまった騎士団だ。
『あれっ?なんでそんなものの名前を付けてしまったんだ?』
「まぁいいや」と面倒くささから適当に切り上げ、撮影を再開する。
「今日はですね、スライムの効率的な殺し方ってのをレクチャーしていこうと思ういます」
サクサクと撮影しながらさらに草を無造作に踏み分けていくと、その音に気付いたスライムがこちらを向く。
――こちらを向くという表現も微妙なフォルムだが、音を出して気づき向いた方が正面と言われている。
「みなさんよく知っていると思いますが、音を聞いてこちらを向いた方が正面です。そして、上は頭上ですね」
さらサクサクと歩いていくと、スライムの動きが固くなった。
つまりこれは攻撃態勢ということだ。
「動きが鈍くなりましたね。あと3歩くらいで相手の間合いです」
そう言いながら3歩進むと、一瞬、伸縮し、一気に跳ね上がった。
「ほっ!」
バシン!と、スライムを手で張り落とすと、地面に強くぶつかり動かなくなった。たぶん、スタン状態かな?
「えー……。スライムの種類によっては溶解液とか体にまとっている奴も居るんですけど、どのスライムにも共通して足は触れるってことなんですよね」
「球体のスライムに足なんかあるのか?」と思うかもしれないが、実はスライムにも足はある。
実際は足が生えているとかではなく、「何の能力もない部分が存在している」というだけで、俺がそこを
「それでですね。この足から手を突っ込むと――こんな感じに
スライムが溶けると、
美味すぎる。
「一歩間違えると、溶解液に手を突っ込んだり毒になったりするので注意が必要ですが、武器も要らないのでオススメです」
「それでは、さようなら~」と挨拶をしてカメラを止めた。
「いやー。美味い仕事だわ、冒険者ってやつはよぉ~」
それから50匹くらいのスライムを狩って狩って狩りまくった。
これで15万とは、楽で楽でしかたがない。
□
「免許がないと買い取りできないんですよ」
「……はい?」
ギルドの職員――じゃなかった、ダンジョンの職員にそう言われて俺は目を丸くした。
「あなたは、今回、羽衣さんのグループのカメラマンとして入場していましたよね? なんで、免許については特になかったのですが、これが魔石販売となると免許がないとダメになりまして」
「そっ、そんな……。俺の15万が……」
膝から崩れ落ち、カウンターに寄りかかるように転がった。
「――あと、トドメを刺すようで申し訳ありませんが、魔石1個3000円は昔の話で、今はキロ300円になっています」
「ガハッ……」
やっぱり、この世に美味い話はねぇよ……。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
☆・♡・感想・ブックマークなどなどいただけると、とても嬉しくやりがいにもなりますので、みなさん気軽にお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます