独学の二人
未帰
第1話 あなたは一人で考えないのね
死とは必ず発生する事象である
これに例外はなく
唯一無変の万象である
死を得たものこそ命を宿し
死は障害ではなく、命の安全装置。
私たちは、違えてはならない。
死は終わりではなく、生命の最高到達点だという事を。
「哲学ですか、雪乃先生」
「一言で言えばそうね」
「何か裏でもあるかのような物言いですね」
「そうね、表も裏も左右も上下もあるは」
「また言葉遊びをして、先生は本当に寛容ですね」
「人生なんて仕事をするうちに終わるの、だからひねてるだけよ」
「先生は仕事が嫌いなんですか?」
「社会に習ってるだけ、本当はハワイにでも行ってBBQをしたいは」
「面白い冗談ですね」
「本当よ、仕事によって生かされてるだけなのよ、殺人犯が羨ましい」
「ちょっと先生、何言ってるんですか!」
「だって思わない?法を犯すほど強欲になれるなんて強い信念がなければ出来ないわ」
「それはただの妄想ですよ、罪人は、ただ短気なだけです」
「あなたも面白い事言うのね」
「冗談じゃありませんよ、からかわないで下さい」
「あなたは正しい罪を知らないのね」
「え?」
「罪には二種類あるの、それは悪と正義よ」
「一体先生は何を言うつもりですか」
「悪を肯定するのよ」
「まともじゃい、先生はイカれてる」
「あなたも短気なのね」
「違う、これは、正常な回答です」
「罪ってね、時には美しいのよ、泣けて来るくらいね」
「説明になっていません、ただ飛躍した言葉じゃないですか」
「本当の罪はね、善悪に境界を引いてる人よ」
「僕の事ですか?」
「自覚あるの、なら分かるんじゃない」
「良い事と悪いことそれが分からないとまともに生きれませんよ」
「あなたも罪人なのね、本当の善人はねホームレスみたいなものよ」
「それってどういう?」
「全てを捨て、一人で生きる覚悟を決めている、それが善人なの」
「一人なら善悪の線引きはいらないっていうただのトンチじゃないですか」
「まだ若いわね」
「じゃあ教えてください」
「あなたは一人で考えないのね」
「いや、そんなことは、ないですけど、先生はイジワルが過ぎます」
「あら、ごめんなさい、でもね、考えなさい、人として生きるために人を知りなさい」
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