超銀河聖妃伝説ヴィッチェーロ

ミストーン

プロローグ 死闘!四人の聖准聖姫

 銀河聖妃ぎんがせいきの座を懸けた四人の聖准聖姫せい じゅんせいきの戦いは激しさを増していた。

 天の川銀河の辺境、現地人が『太陽系第三惑星 地球』と呼ぶ青い星の衛星軌道上にまで戦いの場を移し、全霊をかけて戦う。

 その姿は気高く、美しく……ブックメーカーに投じられる掛け金も急上昇している。


「そこだ!エカテリーナ!」

「何の……まだっ!」

「じゃあ、こっちから……」

「ちっ……掠った?」

「……追い打ち」

「それは躱します! ……って、何で私ばかり狙ってるのですか!」


 戦況は大きく動いている。

 イノセント・ピンクのバトルドレスを纏った聖准聖姫をまず排除すべく、他の三人が共謀し始めたのだ。


「それは……あなたが一番邪魔だからですわっ!」

「良い子振った優等生って、嫌いだもん」

「……ただ、なんとなく」

「単に利害が一致してるだけじゃないですか!」


 光のフライングボードで鋭いカットバックを決めながら、エカテリーナが叫ぶ。

 銀河公爵家の令嬢という高嶺の花の美少女も、ドレスの裾が翻るのを気にするゆとりをなくしている。

 一瞬、白絹のストッキングを留めるガーターベルトまでも露わになってしまう映像に、実況中継の録画が大いに捗った。


「いくらあなたでも、さすがに多勢に無勢……観念なさい!」

「私は、決して諦めません!」


 エカテリーナの逃げ道を塞ぐように、三人が取り囲む。

 ここで決めるべく、取り囲む三人の聖力せいりょくが高まってゆく。


「オホホホホッ! わたくしの最終奥義の前に散りなさい! あなたなどメス犬に変えてそこの星に堕として差し上げますわ!」

「そんな事……させないっ!」

「地球の野良犬とでもつがって、聖准聖姫の誇りである純潔も喪うがいいわ!」

「わー……私でもそこまではしないよぉ……」

「……人の道を外れてる」

「何でわたくしを精神攻撃してるんですの? まずはあの優等生からと決めましたわよね?」


 一気に決めるべく、三人の聖准聖姫の聖力の輝きが増してゆく。

 迎え撃つべく、エカテリーナも聖力を増幅させた。


(三人相手じゃあ、聖力の総てを使い切らなければ無理ね……。あの惑星に落ちるけど、聖力回復まで逃げ回るしかない……)


「落ちなさい、エカテリーナ! ……って、あなたは何ですのぉぉぉぉぉぉっ!」


 聖准聖姫たちの聖力が臨界に達した時、そこに思わぬ乱入者があった。

 衛星軌道上で元気に働いている、地球の人工衛星である。

 銀色に輝く機体が聖准聖姫たちの最終奥義の輝きを乱反射して、総てを眩い輝きの中に包み込んでしまった。

 銀河放送局のカメラすらホワイト・アウトしてしまう輝きが消えた時――。

 その空間には、誰も存在していなかった。

 しかし、四人の聖准聖姫の健在を示すバイタルマークは輝き続けており、銀河聖妃選定委員会は、アクシデントによる暫しの戦闘中断と判断した。


 気高く、美しい聖准聖姫たちの戦いの再開を誰もが待ち望んでいる。

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