ツインズ

るり

2月

「「かんぱーい」」

仲良くなるためには。そう思って彼氏を説得させてまで参加した、新しく始めたバイト先の同い年の飲み会。でも気まずい。9人もいるのに名前と顔が一致するのは半分もいない。何なら、初めて見る顔の子もいるんだけど。こういった時は

「トイレ行ってきます。」

そっと部屋を出て喫煙所に逃げようとした。

「トイレなら一緒に行こうかな」

声をかけてきたのは隣の子。名前なんだっけ。トイレには行かないんだけどな。

「えりって呼んで。るーって呼んでいい?」

「あ、はい。是非。」

「敬語やめてよ。同い年なんだし。」

「あ、うん。ありがと。」

「そういえば、るーってタバコ吸うんだっけ?りんから聞いた。実はうちも昔吸っててさ。今から一緒に行こうよ。」

「え、そうなの?なんかうれしい!一緒行こ?」

りんくんはバイトのことを教えてくれている少ない喫煙仲間。いつもの私の喫煙仲間はりんくん、あみさん、店長の三人。まさか、こんなところで仲間が増えるなんて。

「うち今はもうやめててさ。持ってないんだよね。」

「全然あげるよ。一緒に吸おう?」

そんなこんなで話に花が咲き気づけば結構な時間が経った。

プルルルルルル

「もしもし?あ、戻る戻る!」

「ん?なんて?」

「たっちゃんから。もう飲み放題終わっちゃうよって心配の電話だった。」

「え、もうそんな時間?やばいね、戻ろう。」

戻るとみんなそれぞれに盛り上がり、二次会の話まで出ているみたいだった。

「もうどこ行ったのかと思ってたよ。集合写真撮ろうって話しててさ、店員さんに頼んでくる。」

「さすがたっちゃん。頼れる幹事だな。」

「うっさいな~。そうだ、るーちゃん。インスタ教えてよ。るーちゃんの俺知らない。」

頼れる幹事、たっちゃんは私をこの飲み会に誘ってくれた人で、このメンバーの中では一番喋ったことのある人だ。そんなたっちゃんの発言からみんながインスタのQRコードを私に向けてくれた。

「ありがとう。私もるーちゃんって呼んでいい?」

「俺、るーって呼ぼ。」

「こちらこそありがとう。是非呼んで。」

少しだけ、飲み会に、バイト先のメンバーに、馴染めた気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る