第四章
第1話
ハイエンドの中に薄く漂う血の霧。
だが、この血の霧はただ漂っているだけで何か問題を起こすことのないまま既に一週間が経過していた。
「……ふわぁ」
ハイエンドでは動きがない代わりに、この国のみならず世界各国で暴動が起きている昨今。
魔法の使えないただの一般人だけならともかく、魔法を使うことの出来るアル・レテンの構成員に亜人たちも暴動に加わっていることもあり、今では世界の上流階級の人間も本気で対処に乗り出すほどの大騒動となっている。
「暇」
そんな中、僕は自宅謹慎。
未だにラミィとの繋がりの疑いが完全に晴れたわけではなく、現在ハイエンドに漂っている血の霧の持ち主が僕である可能性もあり、僕は大々的に動くことを禁じられ、自宅謹慎とさせられていた。
そんな僕とは対照的にミリア様たち三人は忙しそうに各地を奔放している。
なんならアスカまで駆り出されている。
「お兄ちゃん、お昼ご飯は冷蔵庫にあるあまり物を使ったもので良い?」
「あぁ、うん……良いよ」
そんな中、僕は自分の家でラミィと二人で暮らしていた。
「ってか、全然冷蔵庫に食材ないじゃん。もうちょっと買い物行ってよ」
「僕も謹慎中であんまり家を出れないんだよ」
「なんで謹慎されているのよ!」
「お前のせいな?」
僕はラミィは軽口を交わしながら、何でもないただの日常を共に生きていた。
「おかしいなぁ?私はまだ何もしていないんだけど」
「部下の手綱くらい握ってろ」
「もう私じゃ管理できないくらいに広がっちゃっているから無理だよぉー、勝手にアル・レテンの構成員がそこら辺の一般人を構成員にして魔法を教えて回っているらしいし……もー全然把握できない」
「クソ適当な……」
「お兄ちゃんのようにどこまでも几帳面の面倒くさい男の子よりはマシですぅー」
「ハッ、言っていろ」
世界中で暴れているアル・レテンのトップであるラミィとこうして共に暮らしている僕は間違いなく謹慎されるに値する人物であるし、上流階級の人間から向けられている疑いはただの真実である。
街の中に漂う血の霧だってその半分くらいは僕の物であるしね。
今、僕とラミィは互いにハイエンドの方で血を伸ばし、ハイエンドの支配権をめぐって水面下で戦い続けているのだ。
「それにしてもいい加減諦めてくれない?……あっ、昼食出来たよ、食べる?」
「それはこっちのセリフな?……食べるぅー」
ソファに寝っ転がっていた僕は料理を並べ、椅子へと腰掛けるラミィの方へと向かった。
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