第二章

第1話

 学園の初日、入学式をすっぽかして少女。

 この国の第二王女であるミリア・フランクロとアル・レテンとの間に起きた騒動へと身を置いた僕は王宮の人間から少女を助けたお礼として金一封を貰った。

 それ以外の接触はなく、学園の方からも僕が入学式をサボったことに関して何ら文句は言われなかった。

 

 まるで少女との出来事なんてなかったかのように僕の学園生活が始まった。

 とはいえ、スラム出身の僕は周りの人間すべてから見下されているような状況ではあるんだけどね

 まぁ、これに関しては時間で解決可能だろう。


「ふっ。この私に喧嘩を売るとはいい度胸ではないか」

 

「いや、あの……その私は喧嘩を売るつもりなんてないんですけどぉ。私たちエルフは少々特殊な種族でしてぇ」


「ふっ。これが美しきエルフの持つ者の余裕というものか。私よりも美しいことにも確かに反感を覚えるが、それでも私的には美しきものには醜く嫉妬するよりも感嘆を覚える。確かに普段の私を知っているものならば美しさに嫉妬しているという勘違いをしてしまうのも納得ではあるが、私が一番に言いたいのは君の態度である」


「……た、態度?」


「エルフの耳を隠したらどうかね?」

 

 学園生活における僕の目的は単純。

 お金を稼ぐことである。

 アスカは生まれながらの難病を患っており、その治療代として金が必要なのだ……回復しつつあるアスカを更に元気にするなら今まで以上に金がかかる。

 金持ちである貴族並びに大商人の子息、子女から金を分捕らないとやばいのだ。


「……申し訳ありませんが、どれだけ差別されることになろうとこの耳を隠すことは出来ません」


「君の誇り、そしてその心意気は素晴らしい……だがしかし、ここは人の土地であり、人の国である。善意で告げよう。隠すべきであると。わからぬかね?」


「それでも私は……ッ」

 

 僕はヴァンパイアの血を引くダンピール。

 出来ることはかなり多い……売り物になりそうなものならたくさん持っている。


「ふわっはっはっはっは!我、見参!このような場で喧嘩とは中々派手なことをしておる!我より目立つなど許さんぞ?」


「……これはこれはユスティニア公爵家のご令嬢ではないか。何の用かね?というか、なぜか天井を突き破ってきたのだ?」


「目立つからに決まっておろう。あぁ、修繕費であれば心配しなくともうちの家の者が出す」


「これだから頭まで筋肉に侵されている人は、あぁ、美しさが泣いている。それにそもそも喧嘩というほど激しくやりやっておらぬわ」


「はぅわぁ。さらに増えたぁ」


 美しい者が好きだとか言って美形な人間を男女問わずナンパしている少女、なぜか女であることを隠して男を名乗っている少女、目立ちたいという理由で天井を突き破る少女の三人がいがみ合う廊下で僕は考え事をしながら歩く。


「あっ!!!ロマルスくん!見つけたッ!!!」


「……ッ!?」

 

 そんな僕の耳に絶対聞きたくない声が聞こえてくる……なんで、僕の名を呼ぶのだ、ミリア・フランクロぉ!?

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