第17話

 ミレイユが言っていた通り、出口に向かう僕と少女をアル・レテンの構成員が襲ってくることはなかった。

 既に入学式が終わり、日が傾く頃。

 僕は夕日を背にスラム街を歩いていた。


「……いい加減立ってくれないかな?」


「……ふぇ?」

 

 僕の言葉を受け、少女は驚きの声を上げる……僕にお姫様抱っこされている少女が。


「もう『闇夜の繭』の効果も切れているでしょ。スラム街で立ちたくないって気持ちもわかるけど、立ってくれると嬉しいな」


「へっ……あっ!いや、ふにゃ!?た、立ちたくないなんてことはないよぉ!?」


「あっ」 


 少女はジタバタと自身の体を動かして、僕の腕から落ち……そのままゴロゴロ転がりながら僕との距離を取る。


「いや……流石に転がるのはスラムの人間もしないよ?思っているよりもここって汚いから」


 地面を転がる形で僕から離れ、ふらふらと立ち上がった少女へと僕は困惑しながら声をかける。

 

「ど、どうせ攫われていたんだから……そんな問題ないわ」


「病気の素とかいる可能性もあるから家帰ったらちゃんと綺麗に体洗って服は捨ててよ?」


「わ、わかったわ」

 

 僕の言葉に少女は頷き……離れていた少女は僕の隣へと戻ってくる。


「ふぅー、はぁー。また、助けられちゃったね。本当に、ありがとう。何か、お礼が出来ると……」


 そして、少女は僕へとお礼の言葉を口にする。


「僕も闇の世界を生きるスラムの者。元々アル・レテンとの繋がりを僕は持っているどころか古巣。元アル・レテンの構成員だからね。素直に感謝は受け取りにくいかな」

 

 それに対して僕は苦笑で返す。

 アル・レテンと無関係、ってわけでもないからちょっと感謝は受け取りにくい。


「……」


「……ん?どうした?」


「……じ、自分の村をや」


 しばらくの沈黙の後。


「それ以上は駄目」

 

 触れていいのかと戸惑いながらもそれでもしっかりと僕の過去について触れようとする少女の口を僕は人差し指で塞ぎ、ウィンクする。


「まぁ、お礼をくれるっていうのならいつか僕のお願いを一つ聞いてよ。それで十分だから」


「えっ、あ……はひぃ!!!」

 

 僕の言葉に少女はこくこくと首を縦にふる。


「じゃ、じゃあ私は……ここらへんで失礼しましゅぅぅぅうううううう!?」


「あっ!待って、ハイエンドはまでは送っていくよ!スラムは危険だから!というか向き逆!壁が見えるでしょ!?」

 

 僕は何処かへと走り去っていく少女のあとを慌てて追うのだった。

 んー、それにしてもだけどちょっとだけイベントを前倒しにしちゃおっかな?

 少しくらいの変更、主人公くんなら何とか出来るでしょ……ラスボスである僕が大人しくしているんだしね。

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