第21話 耽美

「私にあなたのお側以外、どこに居場所がありましょう」

静は涙を流しながら最期に言った

首もとには、愛する男が絞めた縄の残痕があった

(なんて美しい顔なんだ)

涙を流し息絶える静の顔を見て、男はそう思った

静を殺した後、男も短刀で自らの首をかっ切った

彼らにとって、共に命を絶つことこそが "愛の証" だったのだ




……なんだこれは

なんて残酷な作品なんだ

全くもって、道徳を欠いている

愛する人の首を絞め、後に自らも命を絶つ事など

愛なわけがない


しかし、何故か美しくも感じる

文字だらけの小説だが

二人の状況は、ありありと目に浮かぶ

静の涙は、きっとエロティシズムをそそられるだろう

美しさと欲望と絶望、愛を極める為ならば

命など惜しまない

これが耽美と言うものか

僕の中で新しい扉が開いたような気がした

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