第14話 曇り空
玄関を出て最初に目に入ってきたのは暗い曇り空
白黒にしか見えないのだ、当たり前といえば当たり前だが
実にこの町は曇りの日が多い
曇りか、雨か大雨か
町全体が闇に覆われている
こんな場所で明るく生きるなんて無理がある
そもそも、人は何故生きるのか
生きていく意味とは何なのか
暗く寂しく物悲しく
そんな闇に包まれた町を歩きながら
無意味な自問自答を繰り返す
しかし、いい暇つぶしにはなったようだ
いつのまにか、小さな商店街の入り口に着いていた
肉屋に花屋に八百屋
様々な店が立ち並ぶ、古びてはいるが栄えている
そんな矛盾を孕んだ商店街に、僕の行きつけの本屋がある
商店街の通りを少し進むと、本屋が見えて来た
だが、僕はあと一歩のところで本屋に近づくのをやめた
少し離れた場所で足を止め、様子を見る
本屋の前で、近所のおばさん達がなにやら話し込んでいる
いつもなら、普通に会釈程度でスルーするところだが
今日はそうはいかない
本屋の店内は奥行きがなく、外からでも容易に中を覗く事が出来る
僕がどんな本を手にするか、人間観察の対象にされるだろう
普段なら、参考書か推理小説を手に取るが
今日は、"恋愛"について調べに来たのだから
これはこれは、近所のおばさん達にとって話の種になる
破廉恥だの、不健全だの言われるに違いない
自分が主役の噂話など、大嫌いだ
幸いなことに、おばさん達は話に夢中で僕には気づいていない
僕は気づかれる前に、早々とその場から立ち去った
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