ISANA
南木 憂
プロローグ
深海では、
鯨はあの日、あの一言で薄暗い海の底へ沈んだ。
* *
アイドルと同様にVTuberは、どちらもファンとの距離感が生命線である。推される人間は推す人間の人生を彩り、推す人間は純粋に推される人間に情熱をかける。そう思いながらも、
ただ、髪だけは周囲と同じように染めないと決めていた。理由は単純なもので、彼女の〝推し〟が「黒髪の女性が好き」と発言したからだ。
「コンさんだけが私の癒やしだよ……」
コンさん――
海の生き物が好きだという
『皆さんこんばんは、
ボイスチェンジャーによって少しだけ加工された声は、彼の穏やかな口調も相まってスッと
「コンさんって、リアルはどんな人なんだろう……」
* *
ある日、一本の動画が上がった。
タイトルは『【重大発表】事務所に所属することになりました🐳』というシンプルなもの。【重大発表】と銘打っていざ動画を再生してみると、大したことではなかったということは良くある。そういうことをしない
「コンさん、おめでとうございます」
一番にコメントを残せば、いつものように、その日のうちに返信がきた。その返信にいいねを押して、
そして、思いついてしまう――彼の事務所に就職すれば良いのだと。周囲が就活を始めてからというもの言葉にできない焦りがあったが、その日から将来への不安は希望へと変わった。
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