ザンパ序曲

ゆい

ザンパ序曲

手に馴染んだヴァイオリン 汗でネックが滑ってしまう


調弦はいつも通りにできてるかしら 舞台の上で今更おもう


練習重ねる教室とは 音響設備がケタ違い


神の御使い舞い降りそうな 光のカーテン身に浴びて


観客席をそっと眺める 暗くて穏やか まるで夜の海のよう


前髪ヘンじゃないかしら もう一度鏡でチェックするんだった


指揮者の登場 背筋が強ばる チェックメイト逃げ場なし


だだだ第一音はこの位置だよね 多分きっと落ち着いて私


台に立つ先生が私たちをゆっくり見回し 小さな声で「大丈夫」


ニコっと微笑み両手を挙げる さあみんながひとつになる合図


ご披露するのはザンパ序曲 海賊ザンパのオペラ喜歌劇


船上での大立ち回り ザンパを巡る大騒動


突き抜ける疾走感とフォルテシモ 初めて聴いた瞬間好きになった 


後半の高低音のかけあいが 最高潮の盛り上がり


音響?前髪?そんなもの もはや忘却はるか彼方へ

 

タクトに合わせて無我夢中 いま私たちひとつの楽器なっている


終わったあとの静寂が ジャッジされているようで身が竦む


やがて炎のように湧き上がる 情熱的な拍手喝采


いつも緊張 逃げ出したくなるけれど これが聞きたくて頑張っている


今ここに自分がいる意味 この瞬間 最上の眺めを見るために

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ザンパ序曲 ゆい @musubi_bana

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