第4話 マスク
私は小さい頃から何事にも興味を持たなかった。何を与えられても、勧められても嫌いでも好きでもない。受け入れなければならないことであれば、受け入れ、こうしろと命令がくだれば大抵のことは従った。
興味を持たない反応をしていると、機嫌を伺ってくるか、奇妙な目で見てくるか、勝手に嫌悪感を抱かれるか、飽きられるかのいずれかであった。小さな頃から親が変な言い訳で他人に事情を説明していたり、その度に放つ小言をこれでもかと見聞きしてからか、成長過程の早い段階で"私は正しくない人間"なんだと認識した。他人からもそう勝手にレッテルを貼られていたに違いなかった。日を追うごとに親からのあたりは強くなっていった。今思えばだが最も人間らしい部分である生命の危機を感じたのだろう。が。折檻や罵倒から逃げるべく普通であることを目標に始めたのである。笑うって、泣くって、悔しがるって、喜ぶって、緊張するって、、、リアクションやタイミングなどがわからず真剣に考え抜いた。気がつくと目に映る他人を熱心に観察していた。全く共感を得られないことでも多数派に合わせて賛同した装いすれば害を及ばされる存在からは遠ざかれる。散々目くじらを立てていた親も、近しい触れ合う大人たちもようやく会心したと大喜びをしていた。こんな上部の生き方でいいのか、なんだ簡単じゃない、であればどんな時も他人の顔色を伺った仮面生活を送ろう。幼き頃からながら歪んだ生き方を育みだしたのだった。徹底していた甲斐もあり小学校、中学校と無難に生きてこれたのだ。誰とも仲よくならず、かといって孤独にもならずみんなが笑えば笑った顔を作ったし、真剣な場面や怒られている場面でもワンテンポ遅れてみんなと同じリアクションをすぐにとった。通うことすら興味のない学校。与えられたことはほとんど作業化しており、9年間淡々と反復の毎日を送った。そもそも進学を考えていなかった私だが、周りが行くことが普通という風潮であったため面倒だけども仕方なく1番近いところを適当に選択していた。しかしながら俗物達はそれを許さなかった。他人に説明しても世間から見ても悪く見えない進学校を望んでいたのだった。一体いつになったら仮面を脱げるのであろう。仮面に私を侵食する能力があればどんなに楽だろう。仮面は全くとして私を乗っ取ることをせず仮面のまま。仕方なしにつけて生き続けるしかないのだ。早く終わりにしてほしい。
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