気にしないで

@koshi3x

第1話 ルーティーン

今日も何か話しかけられたなぁり

そんなことをぼんやり思いつついつも通り21時に帰宅。会社から徒歩圏内で家を借りたのは正解だった。借上社宅で選択できたのは隣駅かこの営業所の近くの二つ。僕は国内20支社くらいある中堅どころの会社に勤めて7年が経とうとしている。個人裁量が多くやりがいがあるものの個々人の仕事量は相当なものだと認識している。就職して人生で初めての1人暮らしをすることに。都内や実家にもにも1時間ちょっとでアクセスできるため配属地への不満もない。

7年も経つと平日はほとんど変わらない生活リズムだ。7時に起き髭剃り、シャワー、朝食、着替え8時10分には会社へ到着。そこからは目まぐるしいほど忙しく気がついたら夜という生活だ。慣れてきているし繁忙期に比べたら余裕が出るほどの生活。帰宅路にある21時まで営業しているスーパーにいつもと決まったものを購入し帰宅。元々厳しめの部活動で育ってきたためこうした単調な生活が身についており偶の出張も行くまでは楽しみだが落ち着かないくらいだ。単調な中にも仕事上でのイレギュラーな対応、休日の予定等でバランスが取れている。

「はて、今日もなんて話しかけられたかな覚えてないな」一人暮らしのためシャワーですます日々、貴重なリセットの時間にふっと湧いた独り言。飯もシャワーもほとんど流れ作業。必要なリセット、補給としか考えていない生活リズムの中ででたこの独り言は極めて珍しいと自分自身で思うほどだ。独り言の原因の正体はスーパーのレジスタッフに対してであった。高校生か大学生かつまるところそのくらいの年齢層の女性スタッフ。最近やたら話しかけられるように感じる。性欲も成人男性の人並みにはあるもので街で好みの女性を見つければ目で追ってしまうし際どい服装であれば目をやってしまうことがある。誠実でいたい反面本能に負けてしまう。ちょっとしたトラブルで人生詰んでしまうご時世柄、平穏な毎日を守るため日々の生活が影響する範囲、特に異性に対する接し方には最新の注意を払っている。もちろん僕には妻子や彼女もいない。寂しい夜には憧れる時もあるが、年齢的に責任やらその先やら考え出すと1人で慰めた方が何倍も気楽で良いと結論付いてしまうのだ。新しいルーティンの一つに立候補しているかのように自然にこの女性スタッフは僕の生活に溶け込んでこようとしている。ただ7年のルーティンが新しいことを拒んでいるのか、生活圏内の女性であることから防衛反応が働いているのかどうもしっくりきておらず上手く受け入れてないない。その証拠として話しかけられていることは覚えているが会話の内容が思い出せなかったり、仲良くなろうとする気が一切起きていないのだ。

無意識に近い眠る寸前に「名前すら覚えてねぇや」とまた呟いたのだった。


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