第3話 猛特訓 苦手克服 

おむつ替えとミルクができるようになった魔女は、遂に最も苦手と言ってもいいジャンルである料理、離乳食を作る過程に移った。


 「本当は離乳食って後2,3か月後くらいに始めるのがメジャーなんだけど、魔女様は早めに練習を始めたほうがいいでしょ。ついでに普通の料理も覚えましょ。」


 「そうよね。流石にこの子が大きくなった時にロクな料理が作れなかったら困るものね。」


 「そういうこと。とりあえず、魔女様が今どのくらい料理ができるか確認したいしシチューのレシピを持ってきたから一回これに沿って一緒に作りましょう。」


 「わかった。」


魔女はミサに見守れながらなんとかシチューを作り上げた。だが、お皿に盛られたのは彩鮮やかなホワイトシチューではなく黒一色の何かであった。


 「これは想像以上だねぇ。まさか、ホワイトシチューが真っ黒になるとは思わなかったよ。」


 「私もなんでこうなったかわからない。レシピ通りに作ったはずなのに気が付いたら真っ黒に。」


 「食材の切り方とか調理過程自体には問題なかったし多分火加減なんだろうね。なんでも強火にすればすぐに火が通るってわけではないんだよ。」


 「そうなんだろうけど、なんだか時間が短いほうがいいかなと思って。」


 「魔女様の場合は薬の調合の時間が惜しいからでしょ。好きだもんね。」


 「うっ。おっしゃる通りです。」


 「薬の調合は完璧なんだから料理も同じ要領で出来そうなんだけどね。まぁその辺はおいおいやっていくとして問題は味だね。見てた感じは大丈夫と思いたいけど。」


ミサがシチューを口にすると、焦げによる苦みの他に何か別の形容しがたい味がミサの舌を刺激した。


 「うっ。魔女様私が言った調味料以外に何か入れたかい?」


 「え?え~っとミサが疲れていると思ったから私が作った疲労回復の薬を少し。」


 「ちなみにその薬って原液で飲むやつ?」


 「いや。原液のままだとまずすぎるから2リットルの水に一滴たらすのが適量だよ。シチュ―の量的に数滴なら大丈夫と思ったんだけど。」


ミサは魔女の両肩をがしっと強く握った。


 「魔女様。今後料理を作るときは今言う事を徹底して。まずは火加減。基本は中火で火が通りにくい食材は弱火。そして、料理に薬を入れないこと。料理と薬を区別すること。まとめて摂取させようとしないこと。わかったかい?」


ミサのあまりの迫力に魔女は首を縦に振るしかなかった。


 「わ、わかった。」


この日からミサによる料理の猛特訓が始まった。料理の基礎から応用、離乳食の作り方までノアのお世話に合間に毎日欠かさず練習を行っていった。約2か月の猛特訓の結果、1人で問題なく料理を作れるようになるまでに成長した。


 「はいノア。あ~ん。」


 「あ~。」


ノアは魔女が作った離乳食を美味しそうに頬張った。


 「もう大丈夫そうだね。ノアが初めて魔女様が作った離乳食たべ時の顔と比べれば美味しそうに食べてるしね。」


 「あ~あの時のノアの顔は二度と忘れないわ。」


魔女が初めて作った離乳食を一口食べた時のノアは眉間にしわを寄せ離乳食を飲み込まずに魔女をじっと睨んでいた。


 「すごかったよね。あの時の魔女様に向けたノアのしかめっ面。生まれて間もない赤ん坊がしていい顔じゃなかったわよ。でも、ひとまずは大丈夫ね。魔女様も一通りの家事はできるようになったし部屋も綺麗に保ててるし。一旦帰るわね。旦那たちも心配だし。」


 「えぇ、ありがとね。コムギ、ミサを町まで送ってあげて。」


 「ワン!」


コムギが隣の部屋からミサの荷物を咥えてきた。


 「ありがとう。じゃあ魔女様、何かあったら頼るんだよ。ノアもまたね。」


ミサがノアに手を振るとノアも満面の笑みでミサの真似をして一生懸命に両手を振った。


 「さて、離乳食たべてしまおうね。」


 

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