天邪鬼

@serori37

第1話

      天邪鬼


ふらここや白き足裏褒めらるる


かろやかに攫つてゆける春の鳶


春の水消えぬあぶくのありにけり


落ちてより空しげしげと椿かな


声あげて泣ける素直や青葉風


枇杷の実のあつけらかんと熟るるなり


短夜のピアノにひたと猫の寄る


夕立や返信不要なる通知


梅雨の川濁るよ濁らねばならぬ


水底の小石ころげて桜桃忌


薄紙の湿りのやうな夏の蝶


泳ぎでて力抜くとこ入れるとこ


まだ恋に生きるつもりのソーダ水


ただひとついいねがついて星涼し


一ミリの理性に立つてゐる百合は


片蔭に影なきものの行き交ひぬ


ひまはりや日裏を行くと天邪鬼


闇吸うて線香花火したたるよ


彫像の乳房をつつむ晩夏光


八月尽大きな傘にひとりかな





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