平穏不況
@koshi3x
第1話 狂い返し
何冊目の◯◯ノートだろう。何冊目の資格参考書だろう。何度目の月曜日から生まれ変わる宣言だろう。何度目の有意義な週末の過ごし方計画だろう。何個目の新しいことへの興味だろう。
SNSで流れてくる所謂"成功者"の発信には目を背ける。ここでは正直になろう。背けているのではなく眩しくて、そして何者でもない自分と向き合うのが嫌で嫌でたまらないだけである。時には頭の中で自分と照らし合わせ物思い耽る。感化されればとりあえず行動に移す。それが何回目の1回目が始まる合図となる。居間の床には宅配便を開けた残骸、開けたはいいが読む気も失せる程約款がぎっしりの重要そうな書類が放置されている。そしてそのメンバーには埃が薄らのった余白だらけのノート、20ページしか読んでいない本達が墓地の住民と化していく。
どっから狂ったのか。狂い出したばかりなのか。まだまだ狂うのか。繰り返し自問自答する。あくまでも自問自答なのだ。相談相手も無責任であるのが前提でまともに回答する義務もそもそも能力も持ち合わせているか不明だ。
教えて欲しい。ここから抜け出す方法を知りたい。答えを求めているうちに、頭だけ働かしているうちに悲しいかな人間の三大欲求がいつも自分を襲う。襲うと表現したのはまた悪い癖だ。ここでは正直になろう。
一旦休憩、ひと段落したし、ここまでやったから、集中するため、腹が減っては戦はできぬというし、朝早く起きて1日を有意義に使えるって言っていたし、たまの息抜きも必要、と脳なのか本能なのかわからない何かが勝手に身を考えて防衛ラインを引いてしまうのだ。
襲わせて、身を守らせるところまで自分で脚本を仕上げているのに。わからない。そうして20数年生きてきた己の中には最強の言い訳達人が育ち上がるのだった。達人は"節目"とか"褒美"、"期限"が出てくると気を引き締める。そう、達人も自分なわけで当然、変化を進化を望んいるのだ。そしてここぞ言わんばかりに変われるチャンスと捉えるからだ。達人はきっともう気づいているだろうが、諦めず何度も何度も同じ過ちを繰り返す自分に対し幾度となく付き合ってくれる。そして結局ここまで生きてきて何度となくあった機会を経ても変わっていない自分に対して失敗しても自我を保てるように。それはまるでどうせ変わらない自分をわかっているからこそ、逃げ道を用意して言い訳させてくれるだ。
厄介なことに何もしなくとも生きてこれた。そしてこれからもこの繰り返しで間違いなくい生きていけてしまうだろう。そんな私でいう弱点。フィクションの世界だがゾンビで言うヘッドショット、吸血鬼でいう十字架やニンニクのような弱点がある。それは本質だ。君はなんなの?何したいの?なんで生きているの?生に対する本質。
これまで何度も必死に考えてきた。いや考えらにすら至っていないかもしれない。途中でいつどうにかなるで逃げてきた。これが弱点なはず。考える頭がないんじゃなくて考えたくないが正解だとするともう死人とそう変わらない。多忙を言い訳に。才能を言い訳に。考えや行動をしない。歳を重ねるごとに責任だけ重くなるやりたくもないけどやるしかない仕事で引き続き賃金を貰い続けるだろう。懸命に身を削って働いて生涯の大半をかけても生涯2億円強貰う人生が待ち構えているだろう。世間が変わっていく中取り残される自分に見えない不安と焦りがいつもよぎる。このままでいいのだろうかと。ただよぎるだけ。ただよぎって何かに手を出して言い訳達人に助けて貰う繰り返し。
この後に及んで結果を焦りすぎているなどと都合のいい解釈でいつまでも愚かな思想で生き続けるのだから。救いようがない。そして死期が近づいてきたらいつでもチャンスのあったどうせやらないあれやこれやの妄想を抱いて生を渇望するのだろうとすら予測できる。こんなことを書いてもまたどうせ明日には、いや食事をとって眠くなって昼寝して起きたら言い訳達人がやらなくていい口実を企て何もない生活を提供し続けるのであろう。狂えるのなら狂いたい。狂ってここから這い出したい。今と同じ狂いの繰り返しは意味がない。と誰もが思い、誰でも言う平凡な繰り返し論を提唱する。
平穏不況 @koshi3x
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。平穏不況の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
思い出の中の神殿最新/坂本忠恆
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 5話
雪月花のメモワール/蒼衣みこ
★17 エッセイ・ノンフィクション 連載中 745話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます