第26話 教会


「もう!」と言いながら夢から覚めた俺は隣にいるレーナとミクスを見て笑われてるのを我慢する。しょうがないじゃないか!夢見るんだから。


「おはよ」

「おはようございますご主人様」

「お、おは、ブッ!おはよ主」

「てめぇ、笑ってんじゃねーよ」

「ギャはやめて!ごめんなさい」

 朝からイチャイチャして外に出る。階段を挟んで左右に分かれてるから声は届いてないはずだが、眠れなかったのか寝不足気味のケンタロウ、トウヤ、アキネが現れた。


「寝不足か?」

「はい、ハルさんの所為です」

「え?」

「そりゃ二人とも入って行ったら想像しちゃうでしょ!」

「まぁな」

「はぁ、宿の方が良かったかも」

「慣れろ慣れろ」

 笑いながら軽く話を振って、朝飯を食べる。


 今日は何しようかな?

「今日のお前達の予定は?」

「私買い物行きたい!」

「お、おぉ」

「レーナがついていけばいいだろ」

 レーナはコクリと頷く。

「「おお!」」

「俺らはミクスでいいか」

「ミクスでいいかってなんですか!」

 ミクスはツッコむがみんな笑ってる。

「んで?なにしたいんだ?」

「僕も買いたいものがあるんですよ」

「魔導書だろ?」

「そう!魔法が使いたいんだ」

 二人とも魔法が使いたい年頃かぁ。

「なら魔導書店だな」

 

 二手に分かれて買い物に行く。

 もちろん俺は男組だ。女の買い物は任せた方がマシだからな。

「火魔法の魔導書だ!こっちは風魔法!」

「氷や雷もあるぜ!」

「俺は全部使えるけどな」

「うわっ!チートだ」

「いいなぁ」

「ばっか!それなりに苦労したっつーの!」

 あれは大変だったな。

「あれ?本が開かない?」

「お前さん達は渡り人か?」

 魔導書店のおっちゃんが語りかけてくる。

「そうだが?」

「なら、開く本だけしか覚えられないぞ?」

「「「マジで?」」」

 知らなかった。全部開けたからな。

「うわっ、俺火魔法と風魔法は開けるけどあとは、あ、雷もいけるな!」

 ケンタロウは火、風、雷か。

「俺はその逆みたいだ」

 トウヤは水、土、氷か。

「まぁ、いいんじゃないか?どっちも使い方で変わるからな」

「うっす!んじゃこれ下さい!」

「俺も!」

 二人とも魔導書をバックに入れてご機嫌だ。


「つぎはどうする?」

「んー?やっぱり武器屋かな?」

「そうだな、俺は聖剣があるけどトウヤはスチールナイフだもんな」

「そうか、なら武器屋に行くか」

「「おう」」

 武器屋ではミクスに選んでもらって、良いのが買えたみたいだ。

「防具も見ていくか」

「「おう」」

 防具屋では二人とも新調していた。ケンタロウが青系統でトウヤは黒で纏めていた。

「そろそろあっちも終わるかな?」

 飯屋で待っていると、ルンルンのアキネがレーナと戻ってきた。


「あー、買い物楽しかった!欲しかったものが買えなかったあの時代がほんと悔しいわ!」

 あの時代って、つい最近だろ。

「さて。アキネ達が飯食ったら行くか」

「そうですね」

「おう」

 二人は覚悟ができたみたいだな。

 アキネは表情が暗くなった。

「やっぱり聞かないとだめかな?」

「後悔するぞ?」

「だ、だよね」

「でも聞かないのもありだ。自分で決めろ」

 神様に聞ければだが、

「聞くよ、だって自分のことだもん」

 俺達は教会にいくことにした。


「その前に腹拵えしとけよ」

「うん!」

 アキネの顔は覚悟を決めてスッキリした顔をしていた。



「さて教会に着いたけど大丈夫か?」

 みんな決心した顔で頷く。

「神に祈りを捧げさせてもらうよ?」

「どうぞ、ありがとうございます」

 寄進で百万ゼルを渡す。


 四人で進んでいき膝をつき祈る。


 真っ暗闇だな。

「またきたのか、そう言えばお前のスキルに制限をかけたな」

 知ってるよ!おかげで三ヶ月で目覚めたから良しとしよう。

「この三人はまだ生きている」

 まじか!なら帰してあげたいんだが?

「お前の命に関わるかも知れないぞ?」

 なんでだよ?三人も帰すから魔力がか?

「それもあるが、お前の創造魔法は強力だ。お前の身体が持つかどうか」

 ならレベルを上げるまでだな!

「それもあるな。また来い。少しは助けになるだろう」

 ありがとう神様。



 目を開けると三人は泣いていた。

「ぼぐ、いぎでまじた」

「お、おれも」

「ひっぐ」

 ケンタロウもトウヤもアキネも、流れる涙が俺も嬉しくなるな。微笑んで言ってやる。

「俺が帰してやるからな」

「ばるざん」

「だって、ハルさん死んでるんだろ?俺達を帰すことないだろ?」

「うえぇぇん」

 三人とも俺の事を考えてくれていたのか。

「レベルを上げないとな!お前達を帰してやれないから!」

「「「……」」」

「生きてんだろ?あっちで?なら帰してやるから!」

「「「あぁああぁ」」」

 三人を抱きしめてやり、帰してやると誓う。


 涙で腫れた目をした三人とともに家に帰ると、レーナとミクスが、三人におしぼりを持っていく。

 三人とも無言で受け取ると、涙で腫れた目に当てている。


「よし、俺はこれからレベル上げをしないといけないからな!」

「俺も手伝う」

「僕も」

「私も手伝う」

 三人とも手伝ってくれるらしい。

 優しい奴らをこの世界にいさせては行けない。


 

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