ダダダダダダ
ゴブリン討伐講習を僕はやろうと思ってた。
それでちくちく人気を回復して、徐々に僕を貶す人たちに分かってもらおうとしていたんだ。
人は分かり合える。時間さえ掛ければ、人間って誤解は解けると思ってたんだ。
ただ、そんな僕の思惑は甘かった。いきなりまずいことになったんだ!!!
ルルナが朝のHRで僕に言って来た。
「たいへんよー。隆起っ。あなたのファンが暴動を起こそうとしてるっ」
そう。僕のファンを名乗る人たちが暴動宣言をネットで出してしまった。
慌ててスマホを観た僕は絶句した。
> 隆起くんをこれ以上貶すなら、首相を襲うわ。焼き討ちよ。
> こっちにはSクラス冒険者もついているのよっ。
> おお。まかせなぁ。首相なんてアタシがクビリ殺してやるっ。アッハハッ。
なんか知らないけど、僕のファンにはSクラス冒険者がいて、その人を使って、ファンが僕を勇者と認めるために武力行使の抗議行動を取ろうと盛り上がってる。
世間では、それがニュース報道になり緊迫した状況になっていた。
「エモーーーい。ちょーーエモーーい。伊藤やっぱり神だぜ。あっはは」
クラスでは倉津が盛り上がって、僕の人気はまたしてもすごいことになっているけど、女子、何をきゃーきゃー言ってるの?
なにやってるの!?
府中の駅ビルの右奥になるバッティングセンターで、僕は放課後にルルナに相談した。
ルルナはフルスイングで、ヒットをかっ飛ばしている。
「まずいわね。隆起。このままだと、あなた、日本に居場所がなくなるわよっ」
「そうは言うけど、ファンの人たちが勝手に・・・」
「それは日本が認めてくれるとは思わないわっ」
「じゃあ、どうしろと」
カキーーーーン
そのとき、玉石さんが隣でフルスイングでホームランをかっ飛ばした。
緑色のネットがキレて、ボールがビルの屋上から夕方の空に消えて行った。
「戦えばいい・・・。倒せない敵と・・・そして、勇者として認めてもらればいい・・・」
そこに乙姫ルルナが入って来て言った。
「話は聞かせてもらいました。段取りは私が整えます。任せてください」
テレビでワイドショウで乙姫セリカが宣言をした。
「聞いてください。伊藤くんが勇者だとバチカンの人も、世界の人も認めていない状態だと思います。ファンの人も、品川協会の人も、私も伊藤くんを勇者だと思っていますが、みなさんは納得していないですよね?」
「それはその通りですが・・・どうするんですか? 乙姫さん。私たちは、ろくに力を持たない伊藤隆起さんを勇者として絶対に認められませんよっ」
「そこです! そこです! だから、伊藤くんにみなさんの公募でモンスターを倒してもらいます。日本全国から公明正大に倒すモンスターを募集して、それを伊藤くんが一人で倒したら、みなさん伊藤くんを勇者として納得していただけますよね?」
ええええええええええっ。
「私、伊藤くんを愛してるんですっ。伊藤くんなら絶対やってくれると思いますっ」
なんで、僕がモンスターを倒さなきゃならないんだよぉ。
僕は図書館栄養士で、いきなり強いモンスター倒すなんて無理だってば。
ただ、僕の意見は空しく無視され、そこから日本全国から、僕を勇者認定するためのモンスが募集された。
なぜか僕のファンたちが狂気乱舞している。
> きゃーーー。伊藤くんが、勇者になるわ。
> 世間のみんな、ザマをみなさい。
> 伊藤くーーーん。勝って勇者になってぇえええ。
勝手に盛り上がるファンの中、僕は呆然と立ち尽くしていた。
僕が倒すのは8メートルを超える巨鳥獣形モンスター。バーズグォリ。
Sクラス冒険者がチームで束になって倒せる相手だった。そいつは、新宿の都庁の最上階に最近居座って、まだ、日本で誰も倒したことのないモンスターだ。
僕の家に黒塗りのリムジンがやって来た。テレビカメラがいっぱい僕を囲って、そこから僕はムリヤリリムジンに乗せられ、新宿に向かう。
「おらっ。コゾウ。行くべ?」
ムキムキのSクラス冒険者の案内で僕は、ロッキンゲイルと戦うことなったんだ。
Sクラス冒険者だけしか利用できない銀色の都庁エレベーターに僕は乗せられた。
ぐいーーーん。
「ふふふ。伊藤くん。計画は順調です。あなたは勇者になって、私のものになります」
乙姫セリカが笑っていた。
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