第15話 ゴブリン討伐講習動画

それから、週末にゴブリン討伐講習ボランティア。


撮影機器はルルナに借りて、ゴブリンを倒しながら府中のダンジョンの復興を頼む。


今、上岡ダンジョン1階。


これからゴブリン地帯の西に移動。


動画の撮影をはじめたら、いきなりすごいブーイングコメント。


> 市ね。勇者伊藤。

> 市ね。品川勇者。

> 市ね。ごっつぁん伊藤。


そういうコメントが爆発的に全部に溢れてあちゃあってなる。


ただ、ルルナが隣でウィンクしてくれた。


「はいはい。みんな落ち着きなさい。悪役令嬢のソフィーナが来たわ。後、隆起を殺す発言したら顔面に洗濯ばさみつけるわよっ。洗濯ばさみ地獄よっ」


> おお。ソフィーナ凛々しい。


> ソフィーナちゃん、がんばれ。隆起、俺たちは味方だぞっ。


> 伊藤もがんばれよ。府中ダンジョン復興させるんだろ?


ああ。ルルナのファンの人(下僕さん)やさしー。涙がこぼれそう。




ゴブリンの討伐の講習動画をはじめた。


ルルナに守られてるだけじゃダメだ。僕もがんばらないと。


僕はゴブリンをパタパタ倒しながら、市ねコメントにはいちいちリアクションした。


アンチをからかうとアンチが遊びはじめて盛り上がるらしい。それで視聴率が増える


「市ねって言われると死にたくなくなるんですが。僕の剣どうですか?」


> 市ね。品川勇者。


「僕は死にません。あなたが好きだから。今、ゴブリン倒しましたー」


> 市ね。売名。乙姫を返せッ


「はいはい。乙姫さんはファンなだけですよー。ただ、府中は今大変なんです。ボラでみなさんも協力してください。偽勇者として僕は宣言しますよー」




動画を中継している今、僕は思ってしまう。


ただ考えないように、水を水筒から飲んで一息。


ゴブリンの生息する地帯、ダンジョン1F西は平和そのもの。


カメラをやってくれる山本さんに挨拶。


山本さんは上岡ダンジョンを中心に活躍するダンジョンカメラマン。今は府中が閑散としてるから僕の撮影依頼を快く引き受けてくれたんだ。32歳。


手足をぐーーっと伸ばし準備運動。


うん。今は空気が悪いけど、これからだよね。誰に言われてもコツコツやって行くんだ。Bクラスに上げれば楽になるよね?


ただ。雰囲気悪いな。どうしよ?


「はいはい。みなさん。ちょっと私お弁当作ってきたわ」


ルルナが雰囲気を察して、お弁当を動画で公開してくれた。


ササミフライがちょこんと入っていて、甘い卵焼きが美味しい感じ。


「ソフィーナは悪役令嬢だけど、女子力高いよね?」


「まあ、一般女子としてはこれくらいできないと」


> ソフィーナちゃんのおべんと食べたい。


ルルナと、ファンの人(下僕さん)たちのお蔭で雰囲気が良くなる。





結局、ゴブリン講習は失敗だと思う。


ただアンチの人から伝わってボラに協力してくれれば。


ただ、僕が嫌われる世の中の流れは変わらないなあ。


ゴブリンを殺したついでに、動画止めようかと思った。


だが、そこで、ルルナがなにかを発見。


「あら?」


「どうしたの?」


「でかいモンスターの痕跡があるみたい」


見て観ると、確かに草原の影にでかい足跡。


「おかしいわね。ゴブリンしかいないはずなのに」


「まさかまた下の層からモンスターがやって来たんじゃ?」


「・・・追ってみる? 動画の取れ高的にはおいしいと思うわ」


どうしよ?


玉石さんの方を振り返ると、ラムネシガレットをかじりながら言った。


「・・・だいじょうぶ・・・隆起は私が守るから・・・」


ほんと?


転々とところ処に足跡が北に向かって伸びてる。


「恐竜っぽいわね?」


ルルネが言って、僕もしげしげ観察してみる。


80センチの足跡。太い爪が3本あるモンスのヤツみたい。


ふと、嫌な予感を覚える。・・・これってガルキよりもやばいモンスの足跡だったりして。追っかけたりしたら、僕、ぐちゃぐちゃ?


狂暴なモンスターみたいだ。


こわいな・・・。


「追ってみましょう」


ルルナが言った。

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