第23話 猫カフェ

炎上バズ真っ盛り、ルルナに放課後猫カフェに呼び出された。


府中の猫カフェは府中市の駅ビルにあって、たくさんの女の子が立ち寄るスポット。


オレンジティーを飲みながら、ふうとルルナがため息。


「私、隆起のおかげで人気出たけど、アンチが一定数出来ちゃって今ピンチなの」


「それは悪いことしたね。ごめんね」


「うん。だから、二人で思い切り世の中のためになることをやって、世間から好かれるためになにかしましょ?」


ルルナには悪いことしたなぁ。ルルナは悪役令嬢のソフィーナとして僕の友人を公言してるから、怒ったネット住人がアンチになってルルナを虐めてるみたいだ。


悪役令嬢ソフィーナとして笑ってるけど、結構ケアが大変みたい。申し訳ない。


そこに僕の後ろでボディーガードしていた玉石さんが言った。


「・・・それなら強いモンスターを倒すべき・・・強いモンスターを倒せば・・・好かれる・・・」


玉石さんはやっぱり戦闘狂みたい。僕のこと考えてくれているのか、それとも、なにか戦う口実が欲しいのかよくわからないな。


「隆起はガルキマサラも倒したし、ハンマラスも倒したし、ロットンゲイルも倒したのにアンチばっかりでしょ?」


「・・・むぅ・・・」


確かに。僕は強いモンスターを倒しても誰からも好かれないんだろうか?





府中の猫カフェでお茶を飲みながら僕らは作戦を練る。


テーブル席の周りに、複数の猫がいて、籠で遊んでいたり、毛糸と遊んでいたりする


「・・・なにか人気獲るには、女の子がいいんじゃないかしら?」


寄ってきた三毛猫をなでなでしながら、ルルナが言う。


「にゃー」


「・・・違う・・・。男の子の人気の方が大事・・・。それには・・・戦い」


玉石さんがラムネシガレットをくわえながら、足元に来た黒猫をあやす。


「にゃー」


「どうでもいいんだけど、僕的には安全で平和でなにかできないかなって思うんだけど。コツコツ強くなりたい」


「・・・むーー。・・・それじゃあ・・・いつまで経っても、・・・隆起は・・・私のパートナーになれない・・・」


「あんた、いつの間に、玉石さん口説いたの?」


「口説いてないよ!!!!! 全然口説いてない!!!!」


「にゃー」


ごろごろ。僕の足元でシャム猫が喉を鳴らした。





結局いい案は見つからなくて、家に帰ってもう一度考えることにした。


だけど、そこに乙姫セリカがいたんだ。


なぜか乙姫セリカは僕の家に上って、キッチンでお味噌汁を作っていた。


「おかえりなさい。伊藤くん」


「あっ、はい」


流れで言われて、何故家にいるのか質問も返せなかった僕だ。


しかし・・・すごいなぁ。アイドルが家でお味噌汁を作っているよ。すごっ。


今つけたテレビでも乙姫セリカがしゃべってる。


「私はゴブリンで世界を救います。10日以内です!! みなさん、期待してください」


乙姫さんって人気のためならなんでも言うなあ。


いろいろはっちゃけたアイドル発言ってあると思うんだけど、ゴブリンで10日で世界を救うなんて発言する人いないよなぁ。


けど、テレビの中の乙姫さんと、今、エプロンつけてる乙姫さん。やっぱり、アイドルだなぁ。


かわいい、と思ってしまう。


あっ、乙姫さんが笑った。


「お母さまから鍵を預かっています。婚約者ですから。お夕食の世話くらい」


「偽装婚約者ですけど・・・いいんですか?」


あっ、聞かなきゃよかった。聞いた途端、乙姫セリナが青いルビーのような瞳でにっこりと笑った。


「お返しと言ってはなんですが、やってもらいたいことがあります」


「はい????」




乙姫セリナは言った。


「今月中にあなたが世間の人をあっと言わせるような話題でバズらなければ、私との婚約は破棄。慰謝料として1億円もらいうけます」


「ええっ?」


「しかも話題はゴブリン。ゴブリンを使って私に大儲けさせてください。私はナンバーワンアイドルです。あなたはその婚約者になったんだから当然ですよね?」


「はいぃいいいいいい???????」


ちょっと待って欲しい。婚約の契約書にはお互い同士の自由な婚約の解消が明記されていたはず。そこで僕らにはどうやっても損益にならない契約となっていたんだよね?


「婚約の契約はそうですけど、アイドルの私があなたとの婚約を解消した場合に被る被害は、婚約契約とは別になりますから」


ま、まずいよ。僕、騙されてしまった。この人、悪魔の人だ。


乙姫セリカはにっこりと美人な顔で笑って僕を上目遣いでじっと見た。

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