第12話 ガルキマサラの複体退治

ルルナがガルキマサラを倒して欲しいと言ったのには理由があった。


「なにか知らないけど、妙な噂が広まってしまったの。私が最下層に穴を開けたことになってる・・・」


「どういうこと?」


「ほら。私たちガルキマサラを倒したときに、誰かが開けた大きな穴からガルキマサラが出てきたでしょ?」


「そうだったね。でも、あれって強い冒険者しかできないって話だったでしょ? 僕らじゃ無理って誰でもわかるでしょ?」


「それがそうでもないの。実際にダンジョン行ってない人とかが結構大勢いて、それでその人たちはそんなことわからないから」


「それでルルナのせいってことになってるんだ。あの大穴」


「そうなの」


「えっ? でも、それじゃあ何故僕が一人でガルキマサラ倒さないとならないの?」


「ガルキマサラがまた、出て来そうなの。府中のあのダンジョンで。それでひとつ重要なことがわかったの」


「なに?」


「ガルキマサラって一度倒したことある人は【特攻】がつくんだって。すごく倒しやすくなるの」


「えええええええっ」




つまりはルルナの話を要約するとこうだった。


府中のダンジョンの1Fにまたガルキマサラが現れるんだって。


アメリカでも倒されてるんだけど、倒した相手を追って、複体っていう双子のようなガルキマサラが現れると。


その腹体って元々のよりそのままだと強くて、Sランクでも尻込みする強さなんだ。


それを倒せるのは元々のヤツを倒したヤツ。つまり、僕だけだって話。


「そこでなぜかあなたを説得するのは私の役割になっちゃったの」


「なぜ?」


「元々ダンジョンに大穴を開けたお前が責任持って説得しろって炎上してるの。今の私」


「はあ。ルルナも炎上仲間になっちゃったのか・・・。わかったよ。ガルキマサラの複体僕がやるよ」


「ごめんね。ただ、あなたのせいじゃないかって話もあるから、協力者は私だけしか行けないし、冒険者の協力は得られないけど」


「仕方ないね。やるだけやってみる」




まあ、準備はしなきゃだよね。


図書館検索で、ガルキマサラの複体の情報を収集。


情報元はアメリカのNASAD(ダンジョン特防省)から。


そいつは死んだとこに現れるらしい。しかも、体格は確実に元よりかなり大きく。


ただ、複体は目が見えないで、熱源だけで動くそうだ。


だとしたら、チャンスが僕にはある。


玉石さんが言って来た。


「・・・ガルキマサラとやるの・・・。面白い・・・。私が手伝ってあげる・・・私のせいだし・・・」


これは心強い。


ん? でも、私のせいってどういうこと。


「・・・いずれ・・・話す。・・・今は・・・戦いに集中すること・・・。余計な雑念は・・・死を招く・・・それが・・・戦場・・・」


まあ、そうだよね? 今は戦いに集中。


そこで、僕は上岡ダンジョンにある準備をして向かった。


さて、泊まり込みだ。ガルキマサラの複体が現れるまでずっとダンジョンで待とう。





7日後、厳戒態勢が敷かれて人気のないダンジョンに複体が現れた。


でかい! 目の潰れた前のガルキマサラのよりも大きな複体がいる!!!


そこで、僕は松明に火をつけてそれを玉石さんが手前に投げる。


「・・・食らうといい・・・」


そこから玉石さんが複体を釣りこんでくれて、僕は安全にチャンスをうかがう。


複体が釣られて松明へと向かう。


思った通りだ。


熱源に反応する複体は松明に集まる。


ならば、松明に複体が寄っているところを、そろそろ行って、ズブリ!!!


「ぎゃぁああああああ」


ガルキマサラ特攻発動。


見事に剣で斬りつけて、僕はガルキマサラの複体を倒した。


玉石さんが笑った。


「・・・隆起は筋がいい・・・。これは将来私のパートナーとして期待できるかも・・・」


本気?


ルルナが撮影で中継してる。


ルルナのファンが中継を見ていて言った。


> すご! 伊藤のヤツ、またガルキマサラを倒した。


> これで我々の姫が救われた。


> 伊藤隆起ばんじゃい!!



こうして、僕はまたガルキマサラを倒すことによって、全国から認められ、また、全世界でバズることになったのだった。


ルルナからはガルキマサラを倒したお礼に手作りおべんとをもらった。


キャラ弁で、海苔で悪役令嬢のルルナがウィンクしているサクラデンブと、たこさんウィンナーの可愛いおべんと。


たこさんウィンナーが唇になっていて、のり弁のちくわは髪になってる女の子おべんとだ。


「なに、このお礼? かわいいな」


「でしょ? 私の大切なもの。おべんとを男の子に作るのはじめてなんだからね。覚悟しなさいよね」


えっ? 覚悟ってなに?


でも、ちょっと照れた風に頬を染めて笑うルルナの笑顔がかわいかった。

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