第10話 ボディーガード
人気が落ちたときのアイドルの執念を思う。
なんとかするためになんでもするんだな。はあ。
僕は今クラスで話題沸騰。
空前絶後の大ヒーローになってる。
「やるぅーーーーっ。チョーエモい。アイドルとライブで生キスなんか、もはや、人類飛び越えて、神っしょー」
倉津が僕の肩をバンバン叩きながら僕を冷やかす。クラス中どっと笑いがいっぱい。
うーーーん。でも、クラスで人気になってもやばいんだ。
乙姫セリカは恐ろしい。そして、僕は今、身の危険を感じている。
なにか、刺されそうな気がする。
刺されそうな気がする。
ネットでは僕に対する殺害声明が、日に200件は飛び交う。
僕は至って普通の母親想いの家庭系男子なのに、まるでネットでは僕は連続殺人犯のような扱いを受けている。非常に怖い。
「一時的にでもボディーガードとして冒険者を雇ったほうがいいわ。危険よ」
ルルナが言う。
確かに。確かに。
180万あれば、ひと月ボディーガードを雇うくらいならできるか?
痛い出費だけど、これは雇わないと、乙姫セリカのファンに刺されるかも知れない。
ボディーガードを雇った。
同じ学校のBクラス冒険者の玉石クナイさんだ。
ちょっと前髪できれいな顔を隠した感じの僕と同じ歳の女の子。
15歳なのに凄腕だ。
玉石さんはボディーガードを専門にやってるみたいで、ルルナが探してくれて、ひと月50万で雇った。
玉石さんは学園ではたった一人のB級冒険者で超有名人だけど、僕が上岡ダンジョンにたまに入ると言ったら、目をキラリと輝かせた。
「・・・まかせる。あなたぐらいだったら余裕でガードしてあげるから・・・」
「ありがとうございます。是非お願いします」
玉石さんを雇ったことで僕はほっとした。
それに玉石さんから護身術として剣術を習うことができた。
「・・・戦いの心得がない人間を・・・守るのは大変。・・・しっかり教えてあげる」
それから、僕は毎日玉石さんに学校から帰ると剣術を習う感じだ。
玉石さんもクラスも変更して来て、僕につきっきりだ。
「・・・隆起は、命を狙われてる・・・。学校だけで、それを守れる?・・・」
と、玉石さんの言葉で学校もしぶしぶ承知だ。
図書館でのアルバイトは一時的に止めている。危険だから。
玉石さんとの訓練で少しだけ動きがよくなった。
「・・・ふふ。・・・私はダンジョンを壊せるくらいの・・・すごい力を持ってる・・・安心して任せて・・・」
とはいえ、僕は非戦闘員の図書館栄養士だからどうしょうもない。
ただ、ゴブリンとコボルトくらいをコツで倒せるくらいの動きはできるようになった。
玉石さんは言う。
「・・・本当の戦闘はムリ。・・・ゴブリンやコボルトは、動きが単純だから簡単に殺せる・・・」
「それで実戦を入れてくわけですね」
「・・・そう。雑魚倒せるくらいになれば、・・・アイドルのファンから殺される心配もないはず・・・」
「そうですね。がんばります」
僕は毎日ゴブリンと、コボルトを玉石さんのダンジョンの引率でこなすようになった。
ただ、そこでまた今日、問題があったんだ。
乙姫セリカがまた会いに来た。今度は高校じゃなく自宅でだ。
「あなたのこと・・・私、大好きになってしまったんです・・・」
絶対ウソだ!!!
この人、なんでもやる人だ。また僕と炎上して人気を再燃させようとしてる。
すごくきれいな女の子なのにちょー怖い。
僕が完全にドン引きしてると、乙姫セリカが言った。
うるうる青い目をうるませながら、僕にひたっと上目遣いで迫って来る。
「隆起さん。私と結婚してください!!」
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