鏡の中の瞳
・
・
・
「アイツが来てる。おでたちの罠も見破られた。どうしよう」
「あなたは強い、もっと自信を持って」
「俺は強い……でも、他の探索者ならともかく、あいつらに自信は持てない」
「そんなことは無いわ。あなた達にはたくさんの仲間がいる。」
「このダンジョンのみんなが、あなた達の仲間なのよ」
「でも……おでたちの仲間言うこと聞かない。」
「ついてこい聞かない。おでたちだけで、どうする?」
「スケルトンでさえそうだ。閉じ込めて動かないようにしないといけなかった」
「そう、難しい。だから簡単な方を選ぶのよ、相手について来させるの」
「ついて……来させるとは?」
「アイツらはあなたを追ってる。あなたを傷付けるのが目的。あなた達の骨を砕いて、肉を裂いて……神のイケニエにするのを目的にしている」
「うぅ……こわい。逃げたいよ」
「そう、だから逃げるの、あなたの友だちがいっぱいいる部屋に。」
「ここにあるわよね? たくさんの友達がいて、決して尽きない場所が」
「わがった。おでたちの友だちいっぱい、いる部屋ある。そこ逃げる」
「いい子ね。心を強く持つのよ。あなたは強い、どんな存在より。」
「そう想えば、あなたはもっと強くなれる」
「本当か……俺たちは負けてばっかりだ。きっとアイツらには勝てない」
「もう2回ま、まけた。……に、2度あると3度って、No.4が」
「3度目の正直っていう言葉もあるわ。勝てるわ」
「う、うん……」
「ただ運が悪かっただけ。他の探索者には、あなたは勝ててるんだもの。」
「アイツらにだけ勝てない。そんなことはあり得ないわ。あなた達は悪くないわ……」
「俺たちは、悪くない」
「あなたは二人分の魂に経験を刻み込んでいる。強い意志で求めれば……あなたはもっと上に行ける。それこそ私達のいるこの場所にも」
「ほ、ほんとう? おで、ツクヨミに会いたい」
「えぇ。私もあなたに会いたいわ。それを強く想うの」
「聞いて……
「そして感じて……あなたの心に生まれたものを」
「うん……俺も君に会いたい。もっと強くなって、会いたいって思う」
「――信じて」
「うん、おで、ツクヨミの言う事、信じる」
灰色の獣は目の前の明鏡石に向かって語りかけていた。
いや、言葉を投げかけているのは、鏡の中に浮かんでいる月だ。
月は鏡の中にだけ、ぽっかりと浮いている。
獣の側、現実の世界にそれは存在しない。
ただ、虚像の中にだけ、獣に答えを授ける光があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます