09 元転移者

「アキトくん、おはよ。」

可愛らしい声でオレの名を呼ぶ隣に住む幼馴染。

近所にあるというだけで選んだ高校。

偶然にも同じ学校に通い。同じ高校1年生でもある。


朝だけ一緒に登校するのが日課となっていた。

だけど彼女は家を出るのが非常に遅い。呼び出してもなかなか出て来ない。

なので毎日オレが彼女の家の前でお出迎えてしている訳だが。

普通、逆じゃね?


突然だが、オレは先月別世界に飛ばされていた。

向こうで半年過ごして戻って来た異世界転移者である。

戻って来た時は、こちらの時間が経過していなかったため

長い長い夢でも見ていたんだと思い込んでた。

ところが昨日、魔法が使えることが発覚。

事実であることを認識したのだ。


「遅いぞ!」

「ごめんね。先に行っててくれていいのに。」


メイクをバッチリ決め、スカートも短くて可愛い。

毎日遅いのは、その支度に時間が掛かっているものと思われる。

もしかして、オレを意識してるのか?

オレは、魔法を使って彼女の心を読んだ。


(アキト、ウザいよ。

 わざと遅く出て来てるんだからさぁ。いい加減、気付いてよ。

 斎藤先輩に誤解される。一緒に学校行きたくないんですけど。)


あ~あ。魔法使わなければよかった。

明日からどうしよう。

ーーー 完 ーーー

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