れい

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高校生はもっとキラキラしてるものだと思ってた。


実際はどれだけ自分が頑張ったかで人によってキラキラ度合いが違って、生徒会に入って、バイトもしていた先輩や、人気のあまりない地下アイドルのSNSで見かけるだけの同級生は私から見ればすごくキラキラしていて眩しくて。


だからSNSさえ上手く操れなくてインターネットの隅っこで推し活をしているような私でも、生徒会に入れば少しはキラキラできるのかと思って、勇気を振り絞って立候補した。

……結局、落選してしまったけど。


代わりに部活に入った。先生も緩くて優しそうな卓球部にした。練習もそんなにきつくなくて卓球は楽しくて、難しいところもあったけどそれなりに楽しくやれた。

でも、友達はあまり増えなかったし、部活が忙しくて新しく出来た友達と遊びに行くことも出来ない。勉強ができる訳でもないから友達とお勉強会なんて夢のまた夢だ。今日もワークをひたすらに解くだけだ。


そんな毎日を過ごしている中で、転校生が来た。アメリカ人である彼はかっこよくて背が高くて、瞬く間にみんなの注目の的になった。

もちろん。私も。

同じ学年だったから、朝や帰りに廊下ですれ違う度にドキドキした。


翌年には同じクラスになれた。

あれから半年がたっていたからかなり学校には馴染んでいたけれど、先輩からも同級生からも愛されて、いつも色んな人に囲まれてニコニコしていた。

見てるだけだったけど、授業中や何気ない時に彼を見ることが出来てすごく嬉しかった。


好きなんだ、そう思った。


話したこともないし、彼に認識されたことなんて1度もないけど、気がついたらすきになっていた。

友達の誰にも言わなかったし言えなかった(ライバルも沢山居たから)けど、密かにずっと好きでいた。

何度か席が近くなったけど、隣にはならなかったからあまり会話はなく終わってしまった。

近くで発言してる声が聞けて満足だ。



そうして眺めているだけの日々を過ごしていたら、失恋した。



彼女が出来たらしい。

SNSのアイコンを堂々と手を繋いだ写真にして、プロフィールも浮かれ具合が全開で。クラスグループで同じだけの私でも直ぐにわかった。

相手はクラスは違うけど可愛い子。オーケストラ部にいて、楽器の弾ける女の子だ。

私が釣り合わないのはわかっていた、でも、想いもつけず、そしてこんな急に終わると思ってなかった。

その日から2日間熱を出して、学校を休んだ。

熱を出しながらこれでもかというくらい泣いた。起きたら案外腫れてない瞼に気がついてさらに悲しくなった。


だから手紙を書いてみた。

届かないまま終わりにするくらいならと思って、ロッカーに名前も書かずにいれてみた。

怪しいと思って捨てられても構わない。読まれなくても構わない。これは私の自己満の手紙。


そう思っていたのに、彼がこの手紙を持って会いに来た。

机の目の前に立っていた。


それから言ったんだ

「ありがとう」

って。それだけ、あと飴をひとつくれた。


それだけだったのに、諦めていた恋心がもっと大きくなって、苦しくて、また泣いた。

青春は出来なかったけど、恋はしていた。


それだけ。





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れい @waiter-rei

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