120.勇者さん、狙われる
「それで、用はなに?」
「もう少し歓迎してくれてもいいじゃねえの。月丸隊の勇者ツキハさん」
「そう思うなら、挨拶はスキルじゃなくて言葉でしなさい。Starry☆Knightsジェル・ナイトのセンさん」
「へへ」
星型のスライムを肩に乗せた赤髪のはっきりとした目鼻立ちをした男がニヤリと微笑む。
トウキョウ湾岸エリアのとあるダンジョン――
静かに波音さざめく昼下がりの海岸沿いで、月丸隊がStarry☆Knightsと対峙していた。
「かの有名な月丸隊のツキハさんに名前を知られているなんて光栄じゃねえの」
センがニヤニヤしながらそんなことを言う。
「ボス討伐メンバーに写真が公開されてるんだから当たり前でしょ」
「はは、噂通りの照れ屋さんじゃねえの」
「なっ!」
センの煽りにツキハは歯軋りする。
「セン、その辺にしておけ、今日はお喋りに来たわけじゃないだろ?」
短髪のシルバーヘア、やや渋い顔立ちをしたStarry☆Knightsのゲンゾウがセンを
「へいへい、リーダー」
Starry☆Knightsのメンバーは四人、聖騎士のゲンゾウ、ジェル・ナイトのセン、マジック・ナイトのリマ、ヒール・ナイトのナンである。
リマは唯一の女性で、他の三人は男性だ。パーティ内で統一しているのか、全員が黒を基調とした幾分、正装を連想させるデザインの騎士風の装備に身を纏っている。
「んで、実際、何しに来たんだ? おしゃれな車で現れて、いきなり攻撃してくるってのは穏やかじゃねえよな? 偶然、見かけたってわけじゃねえよな? 明らかに俺達に会いに来たって感じか?」
今度は、月丸隊の聖騎士、ユウタが訊く。
Starry☆Knightsのメンバーは移動手段が制限されているリアル・ファンタジーの世界であるにも関わらず、バスではない車で突如、現れた。これは彼らがかつて討伐した魔王:フンソウホウの報酬である”自家用車”であると月丸隊のメンバーにも予想がついた。
「何をしに来たかは現時点では応えられないが、君達に会いに来たのは間違いない」
ゲンゾウが淡々と応える。
「へぇ~、ちなみにどうして居場所がわかった? ダイレクト・ストーカーか?」
「ご明察」
ダイレクト・ストーカーとはプレイヤーサーチの魔具の一つであった。
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■魔具:ダイレクト・ストーカー
【効果】
使用者が顔と名前を知っている、かつ、会ったことのあるプレイヤーの位置情報を検知する。使用するとダイレクト・ストーカーは消滅する。検知情報は5時間継続する。
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「誰か会ったことあったか?」
「ごめん、きっと私だ」
月丸隊、ジェネラル・ヒーラーのチユが珍しくメンバーに謝意を述べる。
「ミテイ達のヘルプをした時、魔帝:カガを倒した直後に彼らに一度、会った。彼らもカガを狙っていたみたい」
「なるほど」
ユウタは頷く。
「そういうこと。お久しぶり」
センがチユに手を振る。
「久しぶりっ」
「……っ」
チユにニコリと手を振り返されたのは予想外だったのか、センは少しだけ焦りの表情を浮かべる。
しかし、すぐにまた不敵な笑みになり、高らかに宣言する。
「んで、あんたらに恨みはないんだが、戦いに来たってわけ!」
「はっ? だから何でだよ!」
ツキハが怒り気味に聞き返す。
「そんなに言うならヒントを教えてやろうじゃねえの。ヒント……魔王:ギャディンの報酬、暴君の手袋の使用条件」
「セン輩、それもうほとんど答えです」
今まで黙っていたリマが呟くように突っ込む。
「細けえことは気にするな! どうせわかることだ!」
ギャディンの報酬”暴君の手袋”の公開リスト上の効果は”付近の任意のプレイヤーの任意のアイテムを強奪する”である。しかし、リストは文字数制限があるのか効果が簡潔にしか書かれておらず、詳しい条件があるものについては別途、詳細条件が記載されている。
そして、暴君の手袋の付加情報として、使用条件に書かれていたのはターゲットが”行動停止状態であること”であった。
「もうわかっただろ? パーティStarry☆Knightsの目的はただ一つ。俺達が最強のパーティになることだ」
その言葉で月丸隊のメンバーも否応なしに警戒レベルを上げ、全員が臨戦態勢となる。
「ところでよ、まぁ、フェアって意味じゃ、ある意味よかったんだがよ……」
センが頭を掻くような仕草で言う。
「月丸隊って三人パーティじゃなかったか? 誰だそいつは?」
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【あとがき】
宣伝です。
本作は、シンプルに推せる作品です。
ハズレスキルすらない努力家凡人、見る人から見れば普通に非凡だった話
https://kakuyomu.jp/works/16817330658501470726
一見、普通そうでやっぱり普通じゃない主人公をご堪能ください。
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