80.おじさん、コリコリ

「マスター! コリコリですよ! コリコリです!」


 サラは嬉しそうに先ほどまで口の中にあった食材についての感想を述べる。


「これがセンダイ名物のミノタンですか。なかなか美味しいですね」


 シゲサトが箸の先にぶら下がるミノタンを見つめながら呟く。


 せっかくトウホク方面に来たということで、二人は精霊スタンプカードにあるウェブを貰うためにセンダイを訪れていた。


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 ○ウェブ

 神虫化を得意とする精霊

 ┗センダイ

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 すでに斡旋所にてウェブ・シャドウを受け取っていた。


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 ■ウェブ・シャドウ ランクP

 レベル:80

 

 HP:1500   MP:800

 AT:400    AG:400


 魔法:インセクト・フィールド

 スキル:変態、精霊の歌

 特性:応援

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 そして、今はセンダイ名物であるミノタンに舌鼓を打っていたところであった。


 ミノタンとはミノタウロスの舌にあたる。


 食感としては牛タンに近くコリコリとして歯ごたえがある。


 ミノタウロスは下級でもかなり強いため、オークに比べると希少価値が高い。


 だが、ここ数日でジサンはすっかりミノタウロスの虜になっていた。


(……ミノタウロスも悪くないな)


 ジサンはそう思いながら、ふと、牧場の状況を確認する。


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 生産対象:

 フックラ・オーク(素材)

 ポッチャリ・オーク(素材)

 ホロヨイ・オーク(素材)

 ゴウワン・オーク(素材)

 チキチン・チキン(素材)

 フツウノ・ミノタウロス(素材)

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(ミノタウロスが入ってる!?)


 元々いたオークとチキンに加えて、ミノタウロスが生産対象に加えられていた。


 ジサンの心を読んだわけではないのだろうが、サイカはミノタウロスに目を付けたようであった。


「さぁ、オーナー、お腹も一杯になったところで最後のターゲットを目指しますか!」


「そうだな」


 ジサン、シゲサトは現在、仙女の釣竿を獲得すべく魔帝:リバドを目指している。


 そして魔帝リバドの出現条件がホンシュウ三湖で特定のモンスターをテイムすること。


 ジサン、シゲサトは最初にカスミガウラにてシクイドリをテイムし、次にイナワシロコでナイスクリームをテイムした。


 途中、ジョウバンのハワイに寄り道もしたが、次は最後のターゲット、ビワコに向かう運びとなる。



 ◇



(あれ……)


「……」


 ビワコへのバス停に向かう途中、人気ひとけの少ない道で進行方向にどこか見覚えのある二人が立っていた。


 その二人は町中でも目立つ赤い装備に身を包んだ男女であった。

 街中で赤の装備をしているのは自治部隊”P・Ower”の特徴だ。


「よぉ、シゲサト」


 二人のうちの男、短髪で顔が整った気難しそうな青年が片手を上げる。


 長めの髪で眼鏡を掛けた女性はその男をじっと見ている。


「や、やぁ、グロウくん」


 シゲサトは少々歯切れ悪く返事する。


 それはイナワシロコ周辺の斡旋所で遭遇したシゲサトと因縁ありげなP・Owerのメンバー……グロウとアンであった。


「ど、どうしたの? こんなところで……」


 シゲサトは困惑気味に質問を投げかける。


「お前を守るために来た」


 真剣な顔つきで言うグロウにシゲサトは反射的に応える。


「あ、いえ、間に合ってます」


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