78.おじさん、事後
「やりました! 皆さん、有難うございます!」
シゲサト見事、邪龍ドラドのテイムに成功する。
邪龍ドラドのランクはQであり、シゲサトにとって初めてのQランクモンスターの成功であった。
シゲサトは100%テイム武器を持ってはいないがドラグーンはドラゴンのテイム率に上昇補正が入ることもあり、無事に一発でテイムに成功したようだ。
ジサンは勿論、羨ましくもあったのだが、ユニーク・シンボルはその名の通り一体しか存在しない。
愛の強い方に譲ることはやむ無しと感じていた。
幸いにして、ユニーク・シンボルは牧場のレンタルシステムでレンタルすれば図鑑登録が可能であるという救済処置がある。
シゲサトがそれを快諾してくれるであろうことは疑いようがなかった。
「あ、あの……ミズカさん……ですよね?」
戦闘後、シゲサトが変わり果てた姿のミズカに疑問を投げかける。
「あ、急に出てきてすみません、実はミズカではなくミテイといいます。えーと、諸般の事情により、ミズカの中に住んでおります」
「え? ミズカさんの中に!?」
シゲサトも最初はかなり驚いたようだが、ジサン同様、このゲームではよくあることだ……とすぐに納得したようである。
「おめでとう! シゲサトさん!」
(あ……)
ユウタが戦闘後のパーティを祝福しに行くので、ジサンも何となくそれに付いていく。
(……て、あれ?)
ジサンは戦闘後のパーティにいるはずの人物が一人いないことに気付き、周囲を確認するように慌ててキョロキョロする。
「……? どうされたのです? マスター?」
「のわっ!?」
サラがジサンの後ろから見上げるように不思議そうな顔を向けてくる。
「何かお探しで?」
「い、いや……」
ジサンは何となく恥ずかしく、お前がいなくて焦った……とは言えなかった。
サラは戦闘終了後、一目散にジサンの元に帰って来ていたようであった。
「さ、行くぞ」
「はーい」
ジサンは再び他のメンバーの元へ歩みを進める。
「あ、有難うございます……! 皆さんのおかげです」
シゲサトは皆にペコペコとしている。
「こちらもメリットがあった。お互い様」
キサがそんなことを言う。
口数は少ないけど、結構いい人だなぁとジサンは感じていた。
「あ、どうもジサンさん……ミテイと申します。初めまして」
「っ! ど、どうもです」
ユウタ曰く最強のプレイヤーであるミテイがジサンに話しかけてきたため、ジサンは少々、恐縮する。
「ツキハから少し話は聞いています。エスタ、アルヴァロの討伐では彼らをサポートいただき有難うございました」
「あ、いえ……こちらもお世話になっているので……」
ツキハの想い人とはこのミテイであった。
ミテイは元々、月丸隊のパーティであり、ツキハとミテイはライバルのような関係でありつつも切磋琢磨し合い、最速で第四魔王:アンディマに到達したのである。
その過程でツキハはミテイに惹かれていた。
実のところミテイもツキハに惹かれつつあった。
しかし、第四魔王:アンディマとの戦いでツキハを庇い、死亡したミテイは偶然にもミズカの中に入れられてしまった。
この事象はミテイから見ても理不尽であったが、どちらかと言えば何の関係もないミズカから見た方がよっぽど理不尽なことであった。
しかし、ミズカはそれを受け入れてくれた。
それ以降、ミテイは宿主であるミズカに尽くしている。
「あいつ……がさつに見えて、結構、いい奴なんで仲良くしてやってください」
「あ、はい……」
(がさつ……?)
ジサンはツキハのことをそのような印象を抱いてはいなかった。
ツキハはジサンがかなり年上であることから同世代に対してより敬意を持って接していたからというのもあったのだろう。
「ウォーター・キャットさんはもしかして魔帝:カガを狙っているんですか? ちなみに俺らはリバドの仙女の釣竿を狙ってますよー」
シゲサトがストレートに聞く。そして自身らが狙っているものも包み隠さない。
ただ、リバドの条件に邪龍ドラドが含まれていないことを鑑みれば、ジサンも彼らが競合相手でないことはわかった。
現在の魔帝と報酬である。
==========================
<難易度><名称>
┗<報酬><説明>
魔帝 ナード
┗魔具:慈愛の雫 全員瀕死時、全員全回復する
魔帝 ジイニ
┗魔具:雌雄転換 使用者は性転換する
魔帝 リバド
┗魔具:仙女の釣竿×4 よく釣れる釣竿
魔帝 カガ
┗特性:召喚獣使役 召喚獣を使役できる
==========================
「まぁ、邪龍を狙っていることから予想できると思うからぶっちゃけますが、その通りです! 魔帝:カガの”召喚獣使役”を狙ってます! ……某メンバーの強い希望でね」
ユウタが答えてくれる。最後の部分で少し目が泳いでいた。
ジサンにもユウタの言う某メンバーについては予想がついた。
シャチの召喚獣をこよなく愛す彼女であろう。
当の本人は特段、表情を変えることなく黙々としている。
「ですよね! お互い頑張りましょう!」
笑顔でそう言うシゲサトを見ながら、ジサンはふと思う。
(そういえば……シゲサトくんは魔帝:ジイニの性転換のアイテムは欲しくないのだろうか……?)
だが、ジサンはそれを特段、口に出そうとは思わなかった。
その後、ジサンらとウォーター・キャットの面々は解散する流れになる。
別れ際にフレンド登録をする流れになったので、ジサンもレジェンドパーティの一角、ウォーター・キャットのメンバーのフレンドコードを入手するのであった。
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