56.おじさん、見学する
ジサンは初めて他人の牧場に足を踏み入れる。
「おぉ……」
サイズ感は最上階の半分程度であろうか。
ややこじんまりしてはいるが、概ね違いはない。
そして、まず印象的だったことは……
「ドラゴンが多いですね」
多い……というかほとんどドラゴンしかいないのであった。
「気づいてしまいましたか……」
(い、いや……これだけ多いと気づかない方が難しいが……)
「何を隠そう、俺は無類のドラゴン好きなんです!」
シゲサトは興奮気味に言う。
興奮しているせいか結構近い距離感だ。
顔が整っているせいで相手が男であると認識していてもジサンは幾分か緊張する。
「は、はい……」
「ちなみにドラグーンは魔物使役可能なクラスの中ではそれなりに強めに設定されていますが、”魔物使役”継承時に制限が発生し、龍にまつわるモンスターしか使役できません」
「へぇ……そうなのですね」
「でも、いいんです! その代りに龍にまつわる便利な特性……例えば、”ドラゴンに関する豊富な知識”や”巨大な種が多いドラゴンの縮小”なんかも使えますし、何より、もうドラゴン以外使いませんから!」
(……そう考えると確かに彼にとってドラグーンは天職だな)
「ヴォルァアア」
(……お?)
話をしていると、一際大きなドラゴンが飛来する。
「お、来てくれたのかい? ヴォルちゃん……!」
「ヴォ」
「彼は、俺の一番のお気に……ヴォルケイノ・ドラゴンのヴォルちゃんです」
「す、すごいですね……見たことのないモンスターです」
体長15メートルくらいある赤いゴツゴツしたドラゴンであった。
ジサンも所持していないドラゴンであり、欲しくなる。
(……モンスターに愛称みたいのを付けた方がいいのかな)
「オーナーも珍しいドラゴンを持っていたりするのですか?」
(ドラゴンと言えば、あいつだよな……)
「珍しいかどうかわかりませんが……」
ジサンは使役モンスターを選択する。
「がぅ……」
相変わらず自信なさげなピュア・ドラゴンがポップする。
「こんなのしかいません……こんなのですが、結構、いい奴で……」
「がぅぅ……」
「ぴゅっ……ぴゅぴゅぴゅ……」
(ぴゅぴゅぴゅ……?)
「ピュア・ドラゴンだぁあ!?」
「へ……?」
シゲサトは大袈裟なリアクションをする。
「お、オーナー!! さ、流石です……! まさかここまでとは……」
「え?」
「え? って、何ですか? 嫌味ですか?」
「い、いや……そんなつもりは……」
「ピュア・ドラゴン……ランクR!? ヴォルちゃんですら、ランクPなのに……しかも条件不明の突然変異型……!? 混ざりけなし、高純度の真正ドラゴンですよ!?」
「え……? 突然変異? 大してレアでもないナイーヴ・ドラゴンを素直に配合していっただけなんだが……」
(確かにデザインはシンプルだなぁとは思ったが……)
「え? 感知系ドラゴン系列はランクRのネガティヴ・ドラゴンが最上位みたいですよ……?」
「がぅ……?」
(ネガティヴ・ドラゴン? 何だそれ? 本来だったらさっきの配合でネガティヴ・ドラゴンになっていたはずということか?)
「マスター……悔しいですが、こいつは大当たりです……」
黙っていたサラが口を挟む。
「えっ!?」
「がぅう?」
(というか、サラよ、悔しいですが……って何だ?)
◇
「オーナーはこれからどうするのでしょうか?」
興奮が少し落ち着くと、シゲサトがそんなことを聞いてくる。
「実は狙っている魔帝の報酬があります」
「それってもしかして……」
「仙女の釣竿……」
「仙女の釣竿!?」
「で、ですよね……! えーと、つまり魔帝:リバド……!」
「シゲサトさんもですか?」
「は、はい! 釣り限定のレアドラゴンもいるみたいで……」
「はは……」
(全くこの人は……ドラゴンのことばかりで……ブレないな……俺もこんな生き方ができたなら……)
などとジサンが素っ頓狂なことを考えていると……
「あの、もしよければなのですが……」
「ん……?」
シゲサトがモジモジしながら提案してくる。
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