いす

むに

I

 そこに一脚の椅子がある。


 その椅子は広い空間内にポツンと置かれており、それ以外はなにもない。


 果たしてなぜ椅子がそこにあるのだろうか。


 誰が座るための椅子なのか。


 そう疑問に思いながらも椅子のほうへと近づこうとはしない。ただ椅子を眺めているだけだ。


 あれはなぜここにある?


 何のための椅子なのか。


 白くだだ広い空間の中、その答えを必死に考えていた。




 椅子を眺めていると、二体の天使が何処からともなく現れた。


【純白の天使】と【金色の天使】。


 輝く翼をはためかせながら、彼らは互いに攻撃し合った。


 そして、金色の天使が勝ち残った。


 金色の天使は息も絶え絶えになりながら、椅子にしがみつく。


 残る力を振り絞り、やっとの思いで腰掛けた。


「空間」は金色に輝いた。


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