第30話 お誕生日、おめでとう!!

心の整理がついてないまま、混沌とした気持ちのまま、帰路を辿った。

Tmitterでは、美鶴から『今日は遅く返ってきてね!』と謎のメッセージが送られてきていた。

どういうことかはさっぱりわからない。


しかし、彼女(仮)の頼みなら聞かなければならない。

まぁ、その関係も今日で終わる可能性だってあるのだけど。


「はぁ、、、」


思わずため息をついてしまった。

中学のあの頃みたいに、何もかもがどうでも良くなりかけていた。


「君はどうしていつもそうなるのかな?」


「あなたは、あの時の、、、!」


目の前には握手会の時の女性が立っていた。

名前も知らない、顔も見えない、しかしいつも服装だけは同じの女性。

どこか懐かしい感じを思い出す女性だ。


「もしかしたら、また彼女いなくなっちゃうかもって、、、でも、その相手のことも、そんなことする奴だとは思ってなくて、、、複雑な気持ちなんですよね、、、」


「その相手のことを信じられないんだったら、無理矢理にでも一回信じ込んでみれば?」


「そんな、根性論みたいなこと言わないでくださいよ」


「人間って、意外と思い込みでなんとかなる生き物だよ!」


俺はうつむき、少し頭を抱える。

信じろって言われても、、、。心の中で葛藤が始まった。


信じたい、でも信じられない。

負のスパイラルに陥っていた。


「信じてるってことにしておきます」


「思い込みこそ正義だからね!」


「そのセリフ、なんか胡散臭いんですけど」


「まぁまぁ、思い込みも大切大切っ!」


とんでもない暴論をねじ込まれた俺は、ゆっくりと歩みを進めた。


「頑張ってね」


真横を通った時、隣からはスーっと風が抜けるかのような音がした。

ゆっくりと流れていく時に、逆らって一瞬だけ、時が進む速さが早くなった気がした。


ーーーこの感覚どこかで、、、。


過去を遡る。

しかし、「どこかであったかのような」でどうしても止まってしまう。

ホワホワとした感じが、続いた。


そして、いつの間にか考えることすらしなくなった。

※1000年に一度のめんどくさがり屋。




★☆★☆★☆★




「ただいま〜」


帰ると夜8時なのに、部屋が真っ暗。

明かりひとつついていない。そして、人影もない。


え?これってやばくね?


そう感じ取った俺は、急いで靴を脱ぎ、リビングへ向かう。

廊下を全力で走り抜ける。


はぁはぁ、、、全力で走ったのっていつぶりだっけ、、、?


自分の思っている速さと、体が出せる最高速度が噛み合っておらず、足元が狂いそうだった。

扉を勢いよく開けると、もちろんリビングも真っ暗。


パンッ。


紙ビラのようなものが頭に乗っかる。


何これ、、、。


「「「「誕生日、おめでとう!!!!!」」」」


「え、、、」


状況を整理するまでに、かなりの時間を要したと思う。

正直、途中までは何をしているのかすらもわからなかった。

そして、驚きのあまり、腰を抜かした俺は、フラフラとした状態でダイニングテーブルの椅子に腰をかけた。


「変な噂されててごめん。実は美鶴さんと、誕生日プレゼント買いに行ってたんだ」


「それで、あんな噂を、、、」


「NTRれたかと思った?(笑)」


「そうだと思った」


「そんなこと、私がするわけないじゃん!」


「だよね」


「お兄様の反応ちょーウケるんですけど!びっくりしすぎて、腰抜かして立てなくなってる(笑)あははっ!」


「兄ちゃんの誕生日準備、めっちゃ時間かかったんだから。感謝しなさいよ!」


「あぁ、、、」


木葉も柄じゃないことして、、、。

どんどん目頭熱くなってくることが、自分でもわかった。

そして、どんどん反応すらも鈍くなっている。


「ありがと、久しぶりだよ、こんなこと」


その時、俺の目からは涙が溢れていたのかもしれない。

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