第21話 フリとかじゃなくて、事故だけは本当にダメ!

土曜日の昼の話。

突然、新企画の始動が告げられてから、丸二日が経った頃だった。

特に企画内容を聞いている訳でもなく、ただ漠然と『企画をやる』とだけ聞いていた俺たち。


「今日の夜、配信できる?」


「予定空けとくね。あと、美鶴ちゃん、生徒会雑用担当でいいなら受け入れるって」


「そんな担当あったっけ?」


「美鶴ちゃん用に作ったらしい」


「だよね〜」


学校のアカウントを作ってから3日が経過した。

現在のフォロワーは500人程度。

篠原の生徒が拡散やフォローをしていることから、有名アカウントへの道筋は出来てきていた。


今日の午前中は、生徒会室でただただTmitterをいじって終わりだった。

特に誰とも話すことなく、他のメンバーは書類をまとめたりなどの、生徒会らしい活動をしていたが、俺は罪悪感なく、自身のアカウントでTLをながめていた。


学校のアカウントはきた時少し開いたが、特にすることがなかった。


「木葉もどこか外に遊びに行けよ」


「みんなと予定が合わないの!」


「もしかして、友達いなかったり?(笑)」


「兄ちゃんと同じにしないで!マジキモい!死ね!」


笑って受け流す俺に、嫌悪感を感じている木葉。

俺と美鶴は各自の自室へ避難することになった。


窓の外を眺めると、まだ桜の木には桜の花の面影すらなかった。


PCを開き、最近始めたFPSゲームを開いた。

『サバゲー』と呼ばれるゲームの一種で、ゆったりとしたゲームや音ゲーなどしかやってこなかった俺からしては、少々慣れるのには時間がかかりそうなゲーム。


この為に、Tmitterで使いやすいと話題のマウスやキーボードを新調した。

確かに、マウスは軽いし、キーボードの応答速度も速かった。


美鶴ちゃんもこういうの使ってるのかな。


「19時から配信開始だから、あと5時間、、、。ゲームしとこ」




★☆★☆★☆★




「惜しいぃぃぃ、、、あと2人だったのに、、、」


あれから4時間半が経過した。

気づいたら、机にはエナドリが置いてあった。

ここまできたら、中毒者と認めざるおえない。


「ご飯食べる気分じゃないし、そのまま作業しよ」


ノートパソコンとマウスを持って美鶴の部屋へ向かった。


「入るよ〜」


「は〜い!」


そう言ってドアを開けると、いつも以上に部屋が散乱していた。

エナドリの空き缶が床に大量に落ちていて、それに加え、お菓子の袋なども全て落ちていた。

部屋の端っこに置かれているゴミ箱には何も入っておらず、しかも新品同様に綺麗な状態。


「今日は流石に、事故起こさないでね」


「もちろん!」


「信用できない、、、」


「えへへ」


「今日の配信では何するの?」


「基本的には新企画の説明と雑談かな」


「有闇さんから連絡きたの?」


「さっききた」


「なるほど」


配信開始時間10分前。

いつも通り、Tmitterでのお知らせを呟いた。

配信には開始前から待機している人が少なくとも1万人はいた。


配信開始前からこれは流石って感じがするな〜。


心の中で関心する俺。


もしも、ここで俺が配信者になったとしても、全然人気伸びないんだろうな。

声もトーク力もない人が、配信者を始めたところで、人気になれないのは火を見るより明らかだった。


興味本意で入って成功するわけなんてない、、、。


「和也くん、最近一月病気味じゃない?」


「まぁ、うん、、、」


【一月病】。

それは、冬休みが終わり、ダラダラしていた生活から一気にいつも通りの生活に戻された時の反動で発症する病気。

他にも【九月病】や【5月病】などの連休明けなどに発症することが多い。


症状はネガティブなことを考えたり、言ってしまったりする回数が増え、なんともめんどくさい人間と化す。

周りにも被害が出てしまい、強い感染力を持っているを人間は、特に危険視されている。


「迷惑かけたらごめん」


「大丈夫!私もよくあることだし」


小さくため息をつき、待機画面に目を移す。

同接数は2万人を超え、さっきの倍の数になっていた。


「3、2、1、スタート!」


事件は、配信開始30分後に起きた。

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