第11話 あぁ、あの頃に戻れたらいいな
街が夕日が沈む瞬間、ぼそっと言った一言。
あの時の言葉が聞こえていたら、どれだけこれからのことが上手くいっていただろうか。
ただでさえ、普通の人とは違う人生を生きている俺。
帰路を辿りながら、そんなことを考えていた。
唯一、街が一望できる場所【倉見神社】の本殿の前で言ったあの一言は、美鶴がはっきりと口にしていたはずだ。
気を抜いていたばかりに、、、。
★☆★☆★☆★☆★
「差し入れも渡したし、付き合ってくれるよね?」
「どこに行くの?」
「さぁ、どこでしょう!」
「突然言われてもなぁ」
目的地は帰り道から少し外れたところにあるらしい。
なぜか、それを俺は必死に考えた。
「色は?」
「赤と黒が多いかな〜」
バスに乗り、行き道と同じ場所に乗った。
窓の隙間から、夕方の風が頬にあたり、少しの肌寒さを感じた。
この時期は、ヒートテックを着ていても寒いことがあるため、美鶴はダウンのコートを身にまとっていた。
ちなみに、有名ブランドのコートだった。
一応俺も、ダウンを着ていたが、ブランドものでもない普通のダウン。
身につけている物全てに、格の違いを感じた。
「分かった?」
「あぁ、ごめん、違うこと考えてた」
考えているうちに、バスは目的地の近くのバス停まで来ていた。
何一つ思いつかなかった。
俺たちはバスを降りたのち、目的地へと歩くことになった。
そこからは目的地まで沈黙が続いた。
ゆっくりと流れること時間に俺たちはただ歩き続けるだけだった。
「着いたよ」
そこには大きな階段があり、山の頂上まで続いていた。
この階段の正体は【倉見神社】という、この街で1番有名な神社で、縁結びの神様が祀られていると噂n、、、。
「縁結び神社だよ!?」
「だからなの」
やけに真剣な顔でこちらを見つめる美鶴に対し、俺は口元のにやけを隠そうと、口元を手で覆い隠した。
この高校に入る時も、この神社にお参りしたっけ。
俺自身も思い出が詰まっている大切な神社。
何か、重大な決め事があったり、受験などの試験の前には必ずここへ参拝しにくる。
すると、願い事もしている時に見える何かが、未来の成功や失敗を教えてくれる鍵となるものだったりする。
俺は黙って、階段を登り続けた。
「手繋ご?」
「!?!?」
「いいじゃ〜ん」
俺は正常より、何倍も早い心臓の鼓動を必死に抑えた。
「ま、まぁ、、、」
「やったぁ!」
コミュ障はこういうの本当に耐えれないんです、、、。
心の中で、独り言を呟き、美鶴の顔を見る。
今回は心の声が漏れていないようだ。
ゆっくりと、手を繋ぎながら、一段一段上がっていくのは、日頃登っている時より、特別感や緊張感が尋常じゃなかった。
ーーー俺は今、人気配信者と手を繋いで、、、。
なんて考えると、俺は罪悪感のあまり、パンクしそうだった。
全てのボルテージが最高潮に達することはなかったが、俺は途中、心ここに在らずの状態で階段を登っていたのかもしれない。
ここから、頂上の本殿までは、ほとんど記憶がなかった。
「やっと着いた!」
長い長い階段を登った先にあるのは、もちろん本殿。
後ろを振り返ると、夕焼けで街が茜色に染まっていく瞬間がハッキリと見えた。
「ようやく明日だね」
「だね」
「準備は出来てる?」
「もちろん!」
「せっかく上まで来たんだから、参拝しよう」
俺たちは100円ずつ賽銭箱に入れ、参拝をした。
両手を合わせ、目を瞑り、願い事を心の中で唱えているところ。
何かうっすらと、女性の姿が見えた。
はっきりとしていないからわからないが、女性だと言うことは分かった。
この時はまだ知らなかった、後に重要になってくることを。
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