第6話 秘密と言い伝え
さて、お父さまは何を話してくれるのだろう?
「実はな、サキに起こったことのほとんどは我が家の記録に残されているのだ。転生者だという事も薄々感づいてはいた」
なんとっ!そうだったのか、確かに同じ年の子に比べて早熟だと思うけどそれでわかってしまうのはすごい。
「教会では知らないふりをしたがスキルや称号の事も全て記録されている。我が家は建国と同時期からある家だからな」
そんなに古い家だったのか、辺境伯だからそこそこ古いとは思っていたが、まさか建国と同時期からあるとはおもわなかった。家名が前世と同じな事と何か関係があるのかな?
「まずは、この国の事から話そう」
「この国の名前はピチャーチ王国、古い言葉で印章という意味だ。詳しい建国記は王城の禁書庫に厳重に保管されているので簡単に言うと、初代王が勇者と共に建てたのがこの国だ」
「次に、リューノ辺境伯は建国以前より墓守として世界中を放浪していた一族の族長の娘と異世界から来た勇者リューノが起こした家なのだ。勇者は元居た世界では神官だったらしくこちらの世界に呼んだ神を祀る事にした、それが昨日行ったジンジャー教会だ。もともとは神社と呼ばれていて当時の本殿含む周辺の建物は勇者の死後、魔境大樹海に飲み込まれたしまった。今では当主と一部の者しか行くことができない」
なるほど...もしかしなくても勇者は前世の血縁者だな、家が神社だし。うちの神社の神主は代々名前を捨て真摯に神に向き合うべしと言われているので勇者は神主だったと思う。確か先々代の神主、私の曽祖父が祈祷中に神隠しにあってそのまま行方不明だって言っていたな。祖父が曽祖父は宮大工の知識もあり剣術も扱えて家族サービスと小粋なジョーク以外はなんでも出来る万能人と言っていたので、勇者になって俺TUEEEEする前からすごい人だったんだろう。転移する前から主人公だな曽祖父。
「初代王と勇者は建国以前から一緒に冒険してきた仲間であり親友だった。その関係で子供たちも仲が良かった。初代王は対等な関係として勇者に王家の友人という立場を与えて不敬罪が適用されないようにして下さった。そしてそれを代々の王家に引き継がせたのだ。」
「我が領内にある魔境大樹海には歴代の勇者と王の眠る墓所があり、そこから無限に湧き出る魔物を狩り国への被害を抑える盟約を代々の王と結んでいる。その対価として王族に先触れ無しで会える事や王家や他の貴族はリューノ辺境伯家に命令や政治的介入などが出来ないという決まりがある。」
「お父さま、それだと我が家に良いことが多すぎませんか?その盟約というものはそれだけ重いものなのですか?」
「そうだ。ここまでが誰でも探れる範囲の話だが、これから話すのは国王とリューノ辺境伯家そして墓守の一族の族長のみが知る秘密だ。さぁ、皆すまないが話が終わるまで部屋から出てほしい。」
「承知いたしました」
そういうと使用人の皆は部屋から出て行った。これからが話の本題かな、私のスキルの事が少しでもわかると良いのだけれど
「さて、まずは墓守の一族について話をしよう」
「【種族名:シジールマ】神を喰らう神を祖としている封印術を得意とする少数民族だ。魔族に属していて魔族領側では封魔族と呼ばれている。魔物を使役・家畜化出来る唯一の存在で大昔に迫害と隷属を受け今ではその数を減らしている。リューノ辺境伯領の領民の9割以上がシジールマの血を引いていて魔物と共生している。我が領内で飼育しているレッサー種はシジールマの力で家畜化した領地の特産の一つだ。今は色々な種族人種の血が混ざっているが、能力の強弱はあれど使えない者はいないな」
「我が家もシジールマの血をひいているのだぞ、族長の血統という少々特殊なものだがな。この血統は薄まらないという特徴がある、おそらく始祖の血が流れている事が影響しているのだろう。そして稀に先祖返りと呼ばれる存在が生まれる事がある。その者は巫女と呼ばれ、異常なほどの食欲と何でも食べる事の出来る体を持って生まれる。巫女は世界中の凶悪な魔物をその身に封じる役目を負っている」
「サキが成人すると同時に役目を継いでもらう事になる。」
うーん...。なかなか濃い内容だな、だけどこれで教会で聞いた話に真実味が増したな。役目自体は問題ない、むしろウェルカムである。この国の成人年齢は18歳で12歳で学園に入学が義務付けられている、という事はあと9年でスキルや称号の解析・検証をしないといけない。いや、育てることを考えると来年までには終わらせたいな。これも明日から並行してやっていこう。
「お父さま、その役目ぜひやらせていただきますわ」
「ありがとう。そしてつらい役目を押し付けてすまない」
「気にしないで下さい、私は食べる事が好きなんです。生まれる前から。」
「召喚された勇者こと私がこの家に生まれてきたのは偶然とは思えません、初代リューノ辺境伯領主は転生前の私の曾祖父でもあるのです。それに、成人まで15年あります。それまでにお父さま達が悲しまないような方法を探して見せます」
「そうか...。私達も出来うる限りの手伝いをしよう」
「話が長くなってしまったな、今回はこれでお開きにしよう」
「わかりました、では明日からよろしくお願いします」
「そうね、明日から頑張りましょう」
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