第9話 騒がしさの正体
「これでよし。後は乾燥させて、それから……」
ミオの練習を付き合った後、家に戻ってきたアリアは、すぐに部屋に籠りお城で貰った薬草を調合していた。ふと休憩がてらに窓を見ると、いつの間にか空は暗くかりかけていた
「お茶でも飲もうかな」
そう呟くとお茶を用意するためにキッチンに行こうとした時、玄関の扉がバンッと勢いよく開く音が聞こえた
「アリア!ご飯持ってきたよ!」
ミオがおかずを入れたお皿をガチャガチャと鳴らして家の中に入ってくると、あたふたと急いだ様子でお皿をテーブルに置いた
「ありがとう。助かるよ」
一人分にしては多いおかずの量を見て、ミオの分も合わせた二人分の分け皿を用意しようと食器棚に向かうが、ミオはまたバタバタと忙しそうに玄関の扉の方へと向かい、扉を開けて大声でアリアに声をかけた
「アリア、私もう帰るね」
「もう帰るの?一緒にご飯食べないの?」
「あの杖を使って魔術を使うのが楽しくってさ!また明日来るから、傷薬作っててね」
「わかった。あまり無理しないでね」
ミオに返事をしながら手を振ると、ニコッと微笑み手を振り返したミオ。パタンと扉を閉じ、パタパタと走り帰っていく足音が聞こえなくなると、アリアが少し寂しそうに持ってきてくれたおかずを見た
「あっ、食べる前にそうだ」
部屋に慌てて戻り、放っておいた薬草を見て、うんうんと頷くと、近くにあった薬草を手に取った
「これをこうして、それから……」
乾燥した薬草を取り、手に持った薬草と合わせると、本棚から少し厚めの本を取り出し、合わせた薬草と交互に見て、またうんうんと頷き、そのまま夢中になってあれこれと調合をしていく
「よし、これも成功。明日、ミオに試してみようかな」
新たな薬草を作り終え、ふぅ。と深呼吸をして呟く。机の上にぐちゃぐちゃに置かれた薬草の残りを見て、キッチンの方へと歩きだした
「後は頼まれた傷薬を、えーっと……」
食器棚からカチャカチャと新しいコップを取りだしながら考え事をしていると、ふわりとそよ風が吹いてアリアの髪が少し揺れた
「窓、開けっぱなしだ!」
薬草を乾燥させるために開けていた窓を閉め忘れていた事を思いだし慌てて部屋に戻り、窓を閉めようとした時、アリアの後ろから、はぁ。とため息が聞こえた
「つまんないの」
声とため息に驚き振り向くと、本当につまらなさそうな顔をしたアクアがアリアの部屋の中をウロウロと動き見て回っていた。戸惑うアリアをチラッと見た後、今度は本棚から一冊取り出してパラパラとめくり読みはじめた
「こんな所に住んでるんだ。お母様ダメじゃないの。いつか言わなきゃ」
本を本棚に戻しながらそう言うと、部屋の扉を開けリビングへと向かうとまたウロウロと動き見て回りはじめた
「あなたは、えーっと、確か……」
慌ててアクアの後を追いかけてきたアリアが困った声で話しかける
「急に来てごめんなさい。ちょっと見てみたくて」
アクアの方に振り向くことなくアクアが言うと、今度はキッチンや寝室を見たり、一通り家の中を見て回っていく。また薬草が置かれた部屋に戻ると、近くにあった薬草を一つ手に取ると、はぁ。とため息をついた
「薬草……。私はあまり好きじゃないんだよね。でも、だからこそなのかも」
「あの、ここに来ていいの?」
「ええ、心配はありません」
アクアの後ろから声をかけたアリアに、フフッと笑って返事をすると、くるりと振り返りアリアを見ると、何も持っていなかったはずの右手に、今日ミオが買った同じような杖を持っていた。その杖の先をアリアに向けると、突然クラっと眩暈が起きて、バタンとその場に倒れてしまった。呼吸をしているのを確認すると、またフフッと笑って玄関の方へと歩きだし、扉を開けるとアリアがいる方の部屋を見て一人呟いた
「私の術にかかれば、魔力のないお姉ちゃんの記憶なんてすぐに消せるから。心配なんてないよ」
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