思いがけず生き残ってしまった

@salad86

第1話 デスゲームの途中で脱出できてしまった

大抵のデスゲームというのはがっつり逃げられないようにできている

その日までそう思っていた

参加者のことは調べ上げとにかくルール通り殺しあって生き残る意外に脱出方法はない


だけどできてしまった

運営のガバとこっちの有能さとの組み合わせの結果

俺たちは殺し合いにより半数が減った状態で

外へと放り出されることになった


だけどそれでよかったんだろうか

外へ出たら即通報 あらゆるメディアに証拠という証拠を送った

しかし運営は別に巨大企業とか国ぐるみとかそんなじゃなく

ただこの悪趣味ドキュメンタリーを売っている小規模反社だった

なので普通に隠ぺいされることもなく捕まり

がっつり刑を食らっていた


それはいい

しかし俺たちはどうなる

「させられた」とはいえ仲間同士で殺しあったのは事実

結構絆ができてしまった仲間を失い

っていうか何人かが手をかけそのまんまでてきた


正直いっそ脱出できない方が良かったのかもしれない

この痛みを共有できるのは仲間しかない

しかし仲の良い奴を犠牲にしたり手をかけたり死ぬ奴決めるのに投票したり

あまりにも恨みつらみがたまり過ぎてる

その時はもちろん仕方なかった みんな極限状態だった

やらなきゃ死ぬし


それは裁判や報道でもきっちり言われた

しかし世間では心無い中傷も飛び交った

最初にメディアに証拠音声や動画を送りまくったのが災いして

個人情報は完全に漏れていた


なんせデスゲームだからあいつに大切な人を殺されたけど

そいつと仲良いやつはそのおかげで生き残った

みたいな複雑な関係がたくさんある

そのおかげで集まりはするけど深い話はできない

すればあの時ばりの血みどろの喧嘩になってしまう


一応俺たちも人を殺したりそれに関与したということで

裁判が長引いたりしたがそもそも突然誘拐されて閉じ込められ

脅されたということで思ったよりもスムーズに進み

ほとんど罪は問われなかった

先日までで「このゲームで生き残るか脱出できれば助かる」で頭がいっぱいだったのに

今はこの状態で就職できるかな…などと現実に追われている


デスゲーム漫画で二週目に参加する生き残りキャラの気持ちがわからなかったが今ならわかる

もうあれを経験した俺たちは普通じゃない

大抵のことを良くも悪くも刺激と感じなくなってしまった

もし心が大きく動くようなことを感じたいなら

あれにもう一度参加するしかないのだろう

仲間たちもだいたいうまく社会に復帰できず

それぞれ死んだ目でちょうど何かのドキュメンタリーでみた戦争帰りのヒッピーのようになっている

違うのは彼らと違って俺たちには同じ状況の地獄帰りはたった十数人しかいないことだ


ああもっと仲間がいたら あの時をやりなおせたら

そうだ


俺たちは当然のようにこれを開催していた反社と似たような位置にいた

法が見て見ぬふりをするような界隈に流れ着き

そこで大きな声では言えないようなことをいくつもして力を付けた

それができたのは

なんとなくや家庭不和なんかでたどり着く人間と違い

明確な目的があったからだろう


「君たちはここから絶対に出られません、殺し合いをしてもらいます」

あのセリフを自分達が言う日が来るとは

センセーショナルであるものの当事者以外にさして影響のないあのニュースは半月で忘れられたこともあり

参加者たちは俺たち同様これは国ぐるみ世界企業ぐるみで逃げられないという嘘をまるっきり信じた

さあどの辺で脱出させてやろうかな

俺らと同じく半分くらいに減った時か


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