第20話 たかいたかい

 我が家でいつの間にかなくなったのが、たかいたかいである。お姉ちゃんが大きくなって、けっこうキツくなったのもある。ままが腰に持病があるのもある。

 けれど、1番に大きいのは、きっといつのまにか、お姉ちゃんの判断で言わなくなったんだろうなぁ。


「どうしたのじゃ、難しい顔をして?」


「なんといったらえぇんかなぁ」


「娘らのことじゃろ?」


「うん」


「そなたは大人で男じゃからわからぬこともある。そしてだからこそできることもあるんじゃ」


「ふむ」


「わらわはそなたのような父がおればな、と思うぞ」


 窓越しに見る月は美しく輝いている。


「そなたはよく書いておるの。手帳やノートに。事象も心象もあろうが、そなたなりに解釈して消化しておるのだろう」


 沁みるなぁ、ことばが。


「必ず届いておる。もっと届くぞ、そなたのことばはの」

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