「だっこ」

　お姉ちゃんは、だっこが大好きだ。二階が寝室だから、ずっとだっこで上り下りしていた。妹ちゃんが生まれて、歩けるようになったお姉ちゃんは歩いて上り下りするようになった。それでも時々、だっこしてってお願いしてくる。

「これはわらわにはどうしようもできぬな」

「うん。かわいいよね。ぼくなら二人とも抱えることはできるんだけど、ままができるわけじゃないからなぁ」

「あのととろ抱っこと言っておったやつじゃな」

「全部、叶えてあげたいけど、難しいね」

「その葛藤はずっと続くんじゃろうな」

　今日もだっこしてと言うお姉ちゃんが、かわいくて仕方がない。きっと、ぼくが思っている以上に、たくさんの気持ちの中から話してくれているんだろうなぁ。

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