【160万PV突破】配信ダンジョン育成中~育てた最強種族たちとほのぼの配信※大バズり中~

空野進

第1章 配信ダンジョンを育てよう

第1話 『レッドドラゴンのミィちゃん』

プロローグ

 気がつくと自宅の庭にダンジョンの入り口ができていた。



 何を言ってるのかわからない?

 うん、僕もわからない。



 そもそもダンジョンなんてものは鍛えている人たちや特殊なスキルを持っている人たちが入るところである。



 小柄で非力、女子とも間違えられる童顔の僕――柚月八代ゆづきとは縁遠い存在である。



 もちろん僕だってダンジョンの配信は好きだ。


 最近だと女性のソロAランクDチューバー『ユキ』や男性四人組SランクDチューバー『明けの雫』などは毎日欠かさずに見ている。



 ただ、Dチューバーは格好いいと思う反面、倒される魔物たちはかわいそうに思う。


 いくらダンジョン内だと何度も復活するとは言え、倒されるために生まれるなんてあんまりだ。


 現在のダンジョン配信至上主義の中だと異端過ぎる考えかもしれない。

 でも、そんな僕の家の庭にダンジョンが突然現れたのだ。



 恐る恐る近づいてみると、ダンジョンに入ってすぐのところに小さなトカゲ君を発見する。

 おそらくこれが魔物なのだろう。


 手のひらサイズの大きさで、色は赤。

 背中には小さな羽が二本生えている。



「ダンジョンのトカゲって羽は生えているんだ……」



 ただこのトカゲ君、よく見ると体に大きな切り傷があった。

 ダンジョン内で怪我をしたのかもしれない。



「ミィィィ!!」



 僕に向けて威圧してくる。

 襲われるとでも思っているのだろう。


 本当なら逃げるべきなのかもしれない。

 でも僕は怪我をしたトカゲ君をそのまま放っておくことはできなかった。


 だからこそ笑顔を見せながら手を差し出す。



「大丈夫だよ。僕にその怪我の治療をさせてくれないかな?」

「ミイィィ!!」



 すぐには警戒を解いてくれず、トカゲ君は僕の指を噛んでくる。



「痛っ!?」



 思わず手を引っ込めそうになる。

 しかし、それではこの子を怯えさせてしまうだけである。

 流れる血をそのままに僕はもう一度同じ台詞を言う。



「大丈夫だよ。僕にその怪我の治療をさせてくれないかな?」



 苦悶に顔を歪めながらも笑顔を絶やさない。

 そこまでしてみせるとトカゲ君にもようやく僕の気持ちが通じてくれる。



 噛むのをやめて、申し訳なさそうに僕の指を舐め始めた。

 その仕草が可愛くて、僕は思わず笑みをこぼす。



「あ、あははっ、く、くすぐったいよ」

「ミミィィ」

「うん、わかってるよ。君の治療をしないとね。今救急箱を持ってくるね」




 すぐさま家へと戻ろうとする僕の頭に乗るトカゲ君。



「えっと、君も一緒に来たいの?」

「ミィ!」

「だ、大丈夫なのかな? ダンジョンの外へ連れ出して……」

「ミッ!」



 トカゲ君は「大丈夫だ、問題ない」とでも言っているように声を上げる。



「わかったよ。その代わりに外では暴れたらダメだからね? 怖い探索者の人たちが襲ってくるかもしれないから」

「ミィッ!」



 なぜかトカゲ君は「私に任せておけ! 全て蹴散らしてやる!」と戦意剥き出しに言ってる気がしてしまう。



「戦ったらダメだからね? 君がもう傷つく姿を僕は見たくないからね!」

「みぃぃ……」



 トカゲ君は申し訳なさそうに顔を伏せる。




「うんうん、わかってくれたらいいからね。それじゃあ行こうか!」




 僕は頭にトカゲ君を乗せたまま、家へと帰っていく。

 家に戻ってわかったことは僕は包帯を巻くのが苦手ということだった。

 二人とも包帯ぐるぐる巻きのミイラ状態でしばらく過ごすこととなった。




◇◇◇




 トカゲ君が懐いてくれたこともあってわかったことが一つあった。

 どうやら魔物たちにも心があり、しっかり誠心誠意もって対応すれば懐いてくれるようだ。


 その結果、僕の家にあったダンジョンに生息していたのはトカゲ君の仲間たちであった。

 今では僕に懐いて、ご飯であるお肉をよくねだってきてとっても可愛らしかった。


 ただ楽しかったのは最初のうちだけ。

 たくさんの魔物たちを育てていく上で大きな問題に直面する。

 それは――。



「お、お金が足りない……」



 そもそも僕は学校へ通うために亡くなったおじいちゃんの家に一人暮らしをしている。

 両親からの仕送りで生活をしているのだが、僕一人の生活には十分であってもダンジョン内で暮らす魔物たちの分の食事までは考慮されていなかった。当たり前である。


 まさか両親も祖父の家にダンジョンが現れて、息子がそれを大事に育てるなんて思ってもみなかったのだから仕方ないことではあった。



「ど、どうしようか、ミィちゃん……」

「みぃ?」



 今日もスーパーの特売肉を生のまま口にくわえて満足そうにしているのはあのとき怪我をしていたトカゲ君のミィちゃん。

 鳴き声からこの名前をつけたのである。安直だと考えたがミィちゃん自身が気に入ってくれたのでこの名前に決定したのだ。


 このまま行くと彼女の食費すら賄えなくなる。



「僕もバイトをしようかな? でも、そうなるとミィちゃんと過ごす時間が減ってしまうよね……」

「みぃ……」



 ミィちゃんもなんだか悲しそうだった。

 離れて欲しくないと言いたげに僕の頭の上をよじ登ってくる。


 でも、絶賛成長期のミィちゃんはとても重い。


 完全に頭に登り切る前に僕は倒れ込んでしまう。

 そんなときに視界にパソコンが映る。



 Dチューブ。

 ダンジョン内を配信したもので収益を得ることができる。

 基本的にはダンジョン攻略等がメインになるのだが、それしかダメと決められているわけではない。

 トップDチューバーともなれば、それこそ考えられないようなほどの収益を得ているとも聞く。



「こ、これだよ、ミィちゃん!」

「みぃ?」



 魔物たちの育成費はダンジョンの配信で稼ぐ!


 もちろん主流のダンジョン攻略では無いためにそれほど多くは望めないと思う。

 それでも、ミィちゃんたちとの時間がより長く取れるなら――。



「よし、ミィちゃんたちの育成記録を配信で撮ろう!!」

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