第8話 賑やかな星夜祭
次の日の朝。
習慣とは恐ろしいもので、いつも通りに早起きをし、料理の準備をしているとディー兄様達が到着した。感動の再会もそこそこに、料理の準備を手伝って貰っていると、ホテルから皆がやって来た。
食堂に料理を並べ、準備をしていると窓の向こうで唖然と食堂を見ているグレイさんと目が合った。
「!」
私は急いで食堂を出てグレイさんのところへ行った。
「グレイさんごめんなさい。なんか突然、兄達が来まして」
「ええ、俺も昨日ルーカスさんからの電報蝶が来て驚いたんだけど、なんか、人が多くない?」
グレイさんに食堂をチラリと見られた。
「えっと、ですね、四家族来てます。姉妹、兄弟、全員集合です。すみません」
私は小さな声で言った。本当、申し訳ない。
「えっと、俺、いていいのかな?」
「すみません!嫌じゃないならいてください!せっかくの、星夜祭なのに・・・。グレイさんとすごしたいんです。まあ、二人ですごせませんが・・・」
だんだん、声が消え入りそうになる。本当に申し訳ない。
「いや、嫌じゃないよ。驚いたけど。俺がミアさん達家族に入っていいのかな。って思って。いいの?」
「グレイさんと一緒にすごしたいです」
「俺もミアさんと過ごしたいよ」
私が顔を上げると、顔を赤くしたグレイさんがニコリと笑い、ホッとする。
「よかった、では、どうぞ」
私が店に振り向き入ろうとすると、兄様達、姉様達がびたっと窓に張り付き、「彼が?」「ええ、多分」「そうか」「若いわね」と、口々に話して私達を見ていた。
私は顔を押え、「!!もう!!本当ごめんなさい!!」とグレイさんに言い、
「姉様達!!、兄様達!!グレイさんですよ!!」
私は大きな声で言いドアを勢いよく開け食堂に入った。
そこからはグレイさんは耳が何個あっても足りないだろうと思う位、色々質問攻めをされた。
「出会いは何処なの?」
「付き合ってどのくらいなのか?」
「仕事は何をしているんだ?」
「趣味は何?」
「ミアの好きな所を言ってみろ」
「子供はすき?」
「ねー、ねこすきー?」
「ピーマンたべれるー?」
兄様姉様達、義兄様、義姉様(中には姪っ子も)は遠慮なくグレイさんに色々と聞いていく。もう、私は目も耳も塞ぎたかった。
そしてグレイさんも出来るだけ答えていく。
(本当、ごめんなさい)
私は今日何回目か分からない謝罪を心の中でグレイさんにした。
怖い物知らずの子供達は、グレイさんのフードを脱がしにかかり、マフラーを奪い、体に登り出していた。
ちび達はグレイさんの膝の取り合いをしたり、肩車をねだったりしていた。従兄達より年上で、自分の父親達よりも若いグレイさんが珍しいようだった。
子供達は、グレイさんの火傷の跡を触ったりしていたけど、グレイさんは何も言わなかった。
「いたくないのー?」と聞かれて「痛くないよ」と答えていた。
私はグレイさんから、この親族大集合に嫌気がさし、お別れなんて言われたらどうしようと、ハラハラした。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、兄様達、姉様達のグレイさん洗礼パーティは続き、ご飯を食べながら兄様達が持ち込んだお酒で大騒ぎとなった。
小さな子供達は結局寝てしまい。義姉様達がちび達を連れて近くのホテルに行った。
「兄弟、姉妹でゆっくりして。私達も向こうでゆっくりするから、気にしないで。グレイ君、頑張ってね」と言ってくれた。食堂にリフォームした時に部屋を大分潰してしまったので、皆が寝る部屋は無い。義姉様達に感謝だ。
私は片付けをしながら姉様達と話したり、兄様達にお茶を持っていった。
結局時計が夜中の十二時をすぎた頃に騒ぎは落ち着いて来て、起きている人達で一度外に出て、星を眺めロウソクを灯した。
役に立たない兄様達に代わり、義兄様達が大きな子供達の世話をし、寝てしまった子供達を私の部屋に連れていきそこで寝かす事となった。
食堂に戻ってみるとみんな疲れたのか、そこらで寝だしたので、私はストーブをガンガン焚いた。
そこらで寝ている兄様達に毛布を掛けていったのだが、皆幸せそうな顔をしていた。
(兄様達はホテルで寝なくていいのかしら。明日、身体痛くても知らないから)
私は片付けをしながら、戦の跡のような食堂を見回した。
(星夜祭ってロマンティックなお祭りよね?どうしてこうなるのかしらね?)と、思っていると、グレイさんもテーブルで突っ伏して寝ているのを見つけた。
(ああ、ここにも闘いに敗れた戦士がいるわ)
私がグレイさんに毛布を掛けているとベラ姉様とリア姉様が傍にきた。
「いい人ね」
寝ているグレイさんを見て言われ、
「うん。そうなの」
と、私はグレイさんの寝顔を見ながら答えた。グレイさんはとても優しくて綺麗だ。
「ミアが幸せそうでよかったわ。でも、私達がいることも忘れないで。ミアは私達の妹なの。離れていても、私達はあなたを愛してるわ」
そう言うと二人は私をぎゅっと抱きしめた。
「うん。姉様大好き」
私も二人を抱きしめ返した。
三人で抱き合いちょっと泣いたが、後ろを振り返ると酔っ払い寝転ぶ男達がお互いに踏まれたりして寝ていて、それを見て三人で笑った。
「あんな兄様達でもあなたが心配でしかたないの」
「分かってるわ」
私は答えて毛布を兄様達にかけ直してあげた。
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